りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-27から1日間の記事一覧

カポネ(佐藤賢一)

このところ、歴史に題材を求めながら、作者の想像力を思いっきり羽ばたかせた作品が続いています。本書もそんな一冊。中世フランスに題材を求めた小説を得意とする佐藤さんが、どうして禁酒法時代のシカゴギャングのカポネなのでしょう。そんな疑問も読み終…

薄紅天女(荻原規子)

このタイトルで、この表紙。コミックすれすれの、軽い読み物と思って読み始めたら、びっくり。かなり本格的な小説でした。どうやらシリーズの第三弾のようで、神代から伝わる勾玉とか、「闇(くら)」の末裔の少年と「輝(かぐ)」の末裔の皇女とかが登場す…

箱館売ります(富樫倫太郎)

戊辰戦争の棹尾を飾った、函館五稜郭の攻防。その前夜に、函館の一部を租借して、それを足がかりに北海道を領土にしようとしていたロシアの陰謀があった? いかにもありそうです。函館を占領して北海道独立をもくろむ旧幕臣の榎本武揚。彼らの泣き所は、軍資…

モーツァルトのドン・ジョヴァンニ(アンソニー・ルーデル)

オペラ「ドン・ジョバンニ」の初演は、1787年のプラハだったそうです。モーツァルトが、このオペラを書きあげるまでの2週間を描いた小説。 すでに「フィガロの結婚」で大成功を収めていたモーツァルトでしたが、伝説の色事師「ドン・ファン」を主人公に…

新リア王(高村薫)

日経新聞連載を途中で打ち切りにされた小説です。保守王国の崩壊を予見した実名政治小説を許せなかったのでしょうか。それとも、単に不評だったからでしょうか。 『晴子情歌』の続編です。「青森の王」として40年間に渡り衆議院議員として君臨した福澤榮が…

ナターシャ(デイヴィッド・ベズモーズギス)

作者は、8歳の時に旧ソ連・ラトヴィアからカナダに移住したユダヤ人。自伝的要素の強いこの連作短編集には、新生活を立ち上げていく一家が移民として味わった「何ともいえないやるせなさ」が満ち溢れています。 カナダで初めてできた友人である、同郷の老婦…

蝶舞う館(船戸与一)

船戸さんは、少数民族の抵抗を描く作家として定着した感があります。『砂のクロニクル』ではクルド民族の独立を賭けた闘いを、『蝦夷地別件』では松前藩に侵略されるアイヌ民族の抵抗を、『午後の行商人』ではメキシコ先住民族の悲哀を描いた船戸さんですが…

ルパンの消息(横山秀夫)

『半落ち』の横山秀夫さんが、15年前の応募小説を改稿したもの。いろんな要素が詰め込まれすぎていて、未消化で、荒削りだけど、さすが「将来の大ミステリー作家」を予感させる内容です。 「15年前の高校女教師の投身自殺は、生徒による殺人だった」との…

斉藤家の核弾頭(篠田節子)

2075年の日本はとんでもないことになっています。以前の自由主義が少子化を招き国力を減退させたとの反省から、「国家主義カースト制度」によって、高度に管理された社会。 「特A級市民」というエリート中のエリートであった斉藤総一郎は、裁判のコンピ…

ダイブ1~4(森絵都)

2006年の読書初めは、ピデコお勧めの「ダイブ」から。マイナー競技の「飛び込み」でオリンピックをめざす少年たちの物語。 第1巻の「前宙返り3回半抱え型」では、普通の選手だった知季が、夏陽子コーチによって「ダイヤモンドの瞳=動体視力」を発掘さ…

亡国のイージス(福井晴敏)

映画公開は去年でしたが、最近でもDVDの発売で再宣伝してましたね。 ストーリー的にはおもしろかったですよ。日本を守る「盾(イージス)」となるべき、最新のシステム護衛艦がテロリストの手に落ち、東京に照準を合わせたミサイルの弾頭は、米軍から盗み…

翼を愛した男たち(フレデリック・フォーサイス編)

フォーサイスは、人類にとっての極地は5つあると言っています。海、南極/北極、砂漠、高山、そし空。 この本は、フォーサイスが編纂した「空に挑戦した者たちの物語」。飛行機が発明された頃から、戦争に「実用化」された第一次世界大戦にかけての物語が多…

ダヴィンチコードの謎を解く(サイモン・コックス)

ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』に登場するキーワードの解説書。特に感想も無いけれど「キリスト教の異端問題」には詳しくなれます。 『ダ・ヴィンチ・コード』が人気を博した理由は、見直された「マグダラのマリア」の役割がロマンティックだったから…

コールドゲーム(荻原浩)

なんとなく、後味の悪い小説でした。たぶん、その原因はストーリーではなく主人公のせい。「自分は善意の傍観者」という立場を取り続け、「あの時には言えなかった一言を言えた」ことで、「少しだけ成長できた」と満足しちゃう。 実は、会社の中にそういうヤ…

憑神(浅田次郎)

多作のせいか、最近の現代ものは冴えない感のある浅田さんですが、時代もの(特に幕末もの)は、まだまだ読ませてくれます。 下級旗本の次男で、婿入り先を離縁された冷や飯食いの彦四郎。お稲荷さんに出世を願ったら、なんと貧乏神に憑かれてしまいます。し…

銀河帝国の興亡(アイザック・アシモフ)

アイザック・アシモフ著 創元推理文庫(またはハヤカワ文庫SF) 銀河帝国の興亡1:ファウンデーション 銀河帝国の興亡2:ファウンデーション対帝国 銀河帝国の興亡3:第二ファウンデーション 「アイ・ロボット」をはじめとするロボットシリーズと並んで…

宗湛修羅記(森真渉子)

博多の若き豪商・神屋宗湛の悲願は、戦乱で壊滅した博多の再興。秀吉の庇護のもとで、島津征伐の拠点として町の復興をもくろみます。ところが、朝鮮出兵をもくろむ秀吉による博多の軍事基地化は、巨利を生む外洋貿易を閉ざすことになってしまうのでした。 博…

十面埋伏(張平)

中国の文学賞を総取りした作品だそうです。現代中国の「闇の部分」に闘いを挑む捜査官たちのストーリー。タイトルの「十面埋伏」とは、周囲に隙間無く伏兵が潜んでいて「どこに行っても敵だらけ?」と疑心暗鬼になる状態のこと。 刑務所捜査官の羅維民は、あ…

対岸の彼女(角田光代)

この数ヶ月で一番心を打たれた本です。読み終わった後も、何度もページを繰ってしまいました。 内気な主婦の小夜子は、娘の公園デビューもままなりません。意を決して働きに出た先の女社長・葵の気さくな性格に惹かれ、2人は急速に打ち解けていきます。 高…

女教皇ヨハンナ(ドナ・クロス)

カトリック教会は「女教皇」の存在を否定しているようですが、「女教皇」というタロットカードがあるのはなぜなのでしょう本書は、そのモデルともいわれるヨハンナの伝説を描いた小説。 女性は教育を受けることも許されていなかった、中世初期のドイツ。聡明…

女系家族(山崎豊子)

大阪・船場の老舗の3姉妹が、遺産相続で泥まみれの争い。米倉涼子、高島礼子、瀬戸朝香でTVドラマになったようです。このメンバーが争う場面を想像すると、ちょっと怖いな。^^; 代々、跡継ぎ娘に養子婿を取ってきた女系家族だけあって、この3姉妹が思…

経済学殺人事件(マーシャル・ジェボンズ)

ハーバードの経済学教授2人の共作だそうです。ペンネームは、近代経済学の祖であるマーシャルと、限界効用学説を開いたジェボンズを組み合わせたもの。探偵役の教授は、ハーバードの名物教授・フリードマンにそっくり。所かまわず、相手かまわず、経済学の…

ライオンハート(恩田陸)

時を越え、空間を越えて何度も出会うエリザベスとエドワード。17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ・・。2人が結ばれることはないけれど、生涯のどこかで2人は出会い、その都度自分の命を賭けて相手を危機から救うのです。 この…

八月のマルクス(新野剛志)

タイトルは、経済学者の「カール・マルクス」じゃなく、1930~40年代にアメリカで活躍したコメディアンの兄弟のこと。 レイプ・スキャンダルで引退したお笑い芸人・笠原のことを、5年ぶりに、ピンで売れっ子の元相方・立川が訪ねてくる。直後、スキャ…

メジャーリーグ、メキシコへ行く(マーク・ワインガードナー)

アメリカの野球がオーナーたちに牛耳られていた時代。黒人がメジャーリーグに入ることを許されていなかった時代。第二次大戦で徴兵されていたスター選手が戻ってきて、戦時中に「穴埋め」していた選手が、お払い箱になった時代。 1946年、野球の「メキシ…

夏草の賦(司馬遼太郎)

「司馬遼太郎の歴史小説ファン」という、おじさま方がいます。ファンというより「司馬史観の信奉者」と言ってもいいくらいの存在。 確かに、彼の小説に出てくる主人公たちは魅力的なのです。戦国武将も、維新の志士も、明治の建国者たちも。特に「尊敬する歴…

サイドウェイ(アレクサンダー・ペイン)

今年「アカデミー賞脚本賞」を受賞した映画の脚本書です。離婚の傷を癒せず、自作の小説が出版されることを願っているワイン通のマイルスが、一週間後に結婚する親友ジャックを誘い、カリフォルニアのワイナリーを車で回る旅行に出ます。 ワインを思いっきり…

恐怖の存在(マイケル・クライトン)

京都議定書の批准をかたくなに拒むアメリカですが、どうやら環境問題に対する危機感が違っているようです。この本は、アメリカの主張を代弁しているのでしょうか。地球温暖化や海面の上昇を示すデータには根拠がなく、CO2削減などの対応策も有効性が証明…