りぼんの読書ノート

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昭和歌謡大全集(村上龍)

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徹底して他人との関係を築けない、男性6人組。彼らの唯一の楽しみは、週末誰もいない海岸でカラオケを歌うことだけ。そんな彼らの1人が、通りすがりのオバサンを殺してしまいます。

ところが、このオバサンも普通じゃなかった。全員が「ミドリ」という名前の「ミドリ会」のメンバーで、マトモな恋愛を経験できず、自分の人生を不満に思っていたオバサンたちが、復讐に立ち上がります。

この2組が、調布を舞台に「殺し合い」を展開。武器もナイフからトカレフ、そしてロケットランチャーへ。最後は「貧者の核爆弾」と呼ばれるものまで登場して、調布は滅亡。これまたシュールな話だなぁ。^^;

村上龍の問いかけは、「オリジナリティのない日常」に対する怒り。「普通」を嫌うあまりに、このようなキャラを登場させて怒りを爆発させてるのでしょうが、だからといって、地域戦争で社会を破壊するかぁ? ミラン・クンデラの『生は彼方に』を思い出します。彼は、このような「詩作」に決別した作家なのですから。

ところで『半島を出よ』で不思議な活躍をする「イシハラ」と「ノブエ」は、この本でデビューしたキャラです。村上龍の中では、2つの本はしっかり繋がっているようですから、次の「日常の破壊者」を北朝鮮軍に求めたということなのでしょうか。

2005/7