りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-18から1日間の記事一覧

チーム・バチスタの栄光(海堂尊)

去年の『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。バチスタとは「左心室縮小形成術」という心臓手術のことで、肥大した心臓を切り取り、小さく作り直すという困難な手術。 心臓移植の権威である桐生助教授を招聘して構築された、バチスタ手術専門チームの…

孤宿の人(宮部みゆき)

7月の締めくくりは宮部みゆきでした。直前に『天狗風』を再読しておいて良かったな。ちょっと違う意味で、「怪異」について考えさせられる内容だったのです。 四国の小藩である丸海藩に、元幕府高官が罪人として流されてきます。妻子・部下を惨殺した重罪人…

後宮小説(酒見賢一)

いわずと知れた「第一回ファンタジーノベル大賞」受賞作。この賞は「ハリポタ」とか「ナルニア国」みたいな小説を生み出すつもりだったのに、第一回受賞作品が本書になったために、賞の性格が変わっちゃったというのは有名な話です。 ピデコ命名の「なんちゃ…

第四の手(ジョン・アーヴィング)

TVレポーターのパトリックは、サーカスの取材中に左手を失い、一躍有名人になって、ニュース番組のアンカーを手に入れます。彼についたあだ名は「ライオン・マン」。 私生活では「ダメ人間」で女性にもだらしないパトリックは、左手の移植手術を受けたつい…

天狗風(宮部みゆき)

以前tangoが紹介していました。情けないことに内容を忘れていたので再読した次第です。読者を突き放す佐藤亜紀を読んだ後では、読者を見放さない宮部みゆきは、めっちゃ親切に思えますね(笑)。 嫁入り前の娘が次々と「神隠し」にあう事件が発生。被害にあ…

天使(佐藤亜紀)

「雲雀」よりも、こっちを先に読むべきでした。時系列で書かれている分、理解しやすい。天性の「感覚」を持つ幼いジェルジュがハプスブルグの諜報活動を統括する顧問官に見出され、第一次大戦前後の混迷するヨーロッパを舞台に歴史の裏面で繰り広げるサイキ…

ノスリの巣(逢坂 剛)

主人公が「警察庁・特別監察官の倉木美希」というと、「あ、警察の中に巣食う巨悪を暴く話ね」と思いますよね。 はい、その通りでした。「巨悪」のスケールも小さいくせに、リアリティもなくて、まだ青臭い正義感を素直に楽しむことも出来る「湾岸署」のほう…

イソップ株式会社(井上ひさし)

さゆり(中2)と洋介(小6)の姉弟のひと夏の話。2人のお父さんは、イソップという名前の小さい小さい童話出版社の社長。童話好きだったお母さんは、数年前に亡くなっています。 夏休み、お父さんがヨーロッパに出張している間、2人は田舎のおばあさんの…

すべての美しい馬(コーマック・マッカーシー)

1949年のテキサス。戦争中捕虜になり気力を失った父と、もともと都会志向の母は、祖父の死をきっかけに牧場経営をあきらめて人手に渡すことにします。牧場と馬を愛する16歳のジョン・グレイディは、それに耐えられません。自分の望む生き方を求め、愛…

嗤う闇(乃南アサ)

女性刑事・音道貴子シリーズの第5作は短編集。彼女は巡査部長に昇進して、今までの機動捜査から隅田川東署へと転勤になっていました。相変わらず女性に理解のない同僚もいるのですが、彼女を「普通の仲間」と見る男性刑事も増えてきているようです。今回は…

ロング・グッドバイ(矢作俊彦)

チャンドラーの『Long Good-by(長いお別れ)』という傑作は、主人公フィリップ・マーローの名とともに、ハードボイルドの古典です。『Wrong Good-by(間違ったお別れ)』というタイトルを持つ本書はパロディかと思って、軽い気持ちで読み始めたのですが、け…

空中ブランコ(奥田英朗)

自堕落で自分勝手な精神科医の伊良部。しかしそれは「甘やかされた駄々っ子」のようなもので、底意地の悪さや、腹黒さを感じさせないのが救い。 そんな伊良部のもとに、悩める患者が訪れます。空中ブランコを飛べなくなってしまった、サーカスの花形スター。…

雲雀(佐藤亜紀)

前作『天使』の姉妹編・・と言われても、前作を読んでいないからなぁ(笑)。 崩壊前後のハプスブルク帝国を舞台に展開されるサイキック・ウォーズ。というと「ライトノヴェル的感覚」を期待されちゃうかもしれませんが、この人の文体は、純文学的に簡潔で重…

チート(アンナ・ディヴィス)

キャサリンは、ロンドンのタクシー運転手。30才になる彼女は「星の形をした生活」を送っています。要するに5人の恋愛相手と掛け持ちしてるってこと。ところが「星のように輝く瞳の男性」をタクシーに乗せた時から、彼女の生活バランスが狂ってきてしまい…

昭和歌謡大全集(村上龍)

徹底して他人との関係を築けない、男性6人組。彼らの唯一の楽しみは、週末誰もいない海岸でカラオケを歌うことだけ。そんな彼らの1人が、通りすがりのオバサンを殺してしまいます。 ところが、このオバサンも普通じゃなかった。全員が「ミドリ」という名前…

天切り松闇がたり4(浅田次郎)

「多作」になって、ちょっと質が落ちてる感もある浅田さんですが、このシリーズには愛着あるようで、「泣かせの浅田」本領発揮です。 大正から昭和にかけて「天切り松」と異名をとった大泥棒の昔語り。この爺さん、警察署も刑務所も検察局も出入り自由で、彼…

陽気なギャングが地球を回す(伊坂幸太郎)

伊坂さんには、こういう「軽い文体」が向いてますね。「スティング」や「オーシャンズ11」のような、良質のクライムストーリー。おもしろかったですよ。市役所職員の「成瀬」は、他人の嘘を見破る達人。喫茶店主の「響野」は演説好きだが、内容の大半は嘘…