りぼんの読書ノート

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となり町戦争(三崎亜記)

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ある日突然、自分の町が隣町と戦争を始めたことを回報で知らされ、戦争の実感もないのに人口統計上の「戦死者」は増えていきます。偵察員に選任されて役場の女性と偽装結婚して隣町に引っ越してからも、逃亡を指示されて「何か戦争のようなもの」とすれ違いながらも、戦争の実感は全く湧いてこないまま。

町が公共事業として「管理された戦争」をするという発想には、確かに意表を衝かれます。予算を計上し、議会で承認され、相手自治体とも協議して、住民説明会を開催し、一部は民間業者に委託して、戦闘時間や場所については関係省庁の許可をとって、進められる戦争。そして結局は、限られた知人の犠牲の範囲でしか理解のできない戦争。こんなふうな「管理された見えない戦争」で、いつの間にか加害者にも被害者にもなり得る「日常」をサラッと描いてます。

この人、上手なのか、そうじゃないのか、よくわからない。読み安い本だったけど、この本でマジメに何かを伝えたいのなら、失敗してるかな。それと、殺人事件のエピソードは不要だったのでは?

「世界が100人の村だったら」のような箱庭的レベルでしか世界を実感できない、普通の人々の感覚を揶揄して、自嘲的に書いてるんだったらすごいかも。^^

2005/5