りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-17から1日間の記事一覧

半島を出よ(村上龍)

賛否両論の多い本ですが、衝撃的な一冊でした。ちょっと長いけど、まずはストーリーのさわりを紹介しておきましょう。 2010年、経済運営を誤り国家経営を破綻させた日本では、軍備拡大論も台頭。アメリカからも見放され、世界の厄介者になりつつあります…

ストリートボーイズ(ロレンゾ・カルカテラ)

第二次世界大戦では、イタリア本土は終戦のあとで戦火に包まれます。ムッソリーニを退陣させて三国同盟を離脱し、休戦を進めたイタリアに対して、ナチスドイツが攻め入ったのです。 イタリア軍はすでに瓦解。シチリアから北上する連合軍によって「解放」され…

夜来たる(アシモフ/シルヴァーバーグ)

SFの巨匠、故アシモフの短編が、長編に書き直された本です。粗筋はいたって簡単。6つの太陽を持ち「夜」が訪れたことのない惑星。そこに「夜」が訪れたことによって文明が滅びるというストーリー。そのくらいは誰だって、最初の数ページで想像がつくよう…

淋しい狩人(宮部みゆき)

東京下町の古本屋を舞台にして、店主の爺ちゃんと高校生の孫が出会う事件を描いた連作短編。殺人事件や、教師による生徒への傷害事件も扱われますが、大半は、事件ともいえないちょっとした出来事を描いて、宮部さんが得意とする人情物に仕上がっています。 …

狩りのとき(スティーヴン・ハンター)

数年前に大ヒットした「極大射程」の続巻です。この作者は銃の信奉者でバリバリの右翼と思えるのですが、昔堅気で一本筋を通した態度の作風と主人公のことは、嫌いじゃありません。 ヒット作『極大射程』の主人公、ボブ・リー・スワガーが主役なのに、いきな…

アリスの眠り(マギー・オファーレル)

自殺と思われる事故で昏睡状態に陥った29才のアリス。昏睡状態の中、彼女は自分の一生を振り返ります。それは、祖母や母の思い出をたどる旅でもありました。・・・と、私は理解してますが、どうでしょう。 そこで明らかになるのは、家族との絆や彼女の恋愛…

ヒヤシンスブルーの少女(スーザン・ブリーランド)

フェルメールはいいですね。生活の一部を切り取ったような構図と、そのタッチには、優しさと温もりを感じます。この本は、フェルメールによって描かれた一枚の絵をめぐる連作短編。主役となる絵は、表紙の「真珠の耳飾の少女」とは別の、架空の絵画です。 現…

金融腐蝕列島(高杉良)

バブル崩壊後の93年から97年にかけての、某大手都銀の裏舞台を描いた小説です。本書で書かれているのは、97年の住宅債権管理機構の設立まで。金融監督庁の設置や、長銀・日債銀の破綻処理が98年で、みずほ、UFJ、三井住友など大合併によるメガバ…

前田建設ファンタジー営業部(前田建設)

「ゼネコン」につきまとう、談合とか開発による自然破壊とかの悪いイメージ。ビジネス的にも、公共工事はジリ貧、民間工事はコスト割れで非常に厳しい。そんな中、いつもいつも巨大建築物が破壊され、復興工事を必要とする「夢の市場」があるというのです。…

終戦のローレライ(福井晴敏)

映画とのコラボで話題になった本。読んでて恥ずかしくなるくらいベタな小説です。 潜水艦を扱った映画は、たくさんありますよね。見た映画だけでも、「眼下の敵」、「Uボート」、「レッドオクトーバーを追え」、「クリムゾン・タイド」・・。見ていない映画…

未練(乃南アサ)

刑事・音道貴子シリーズの第4作は『鎖』の前後の出来事を描いた短編集。最近、彼女を主人公にした本を立て続けに読んでるな。決してスーパーウーマンじゃなく、悩みながら頑張ってる彼女を、ついつい応援したくなってしまうのです。 それぞれ別の短編に登場…

フェアリイランド(ポール・マコーリイ)

いつの頃から「科学の発達」と「幸せな未来」は共存しなくなったのでしょう。冷戦時代の核の脅威が、SFで描かれる未来のことも暗くしたのでしょうか。極度に発達した科学と荒廃した社会を組み合わせた未来を描いたのは、『ブレードランナー(フィリップ・…

ミカドの肖像(猪瀬直樹)

哲学者のロラン・バルトが「日本の中心には空間がある。しかしその空間は空虚である」との言葉を残しているそうです。「空虚な日本の中心」である、禁断のテーマ「天皇制」について、多面的に検証した本。 皇居の正面に建つ東京海上ビルがなぜ99.7mなの…

鎖(乃南アサ)

男社会の警察で頑張ってる、刑事・音道貴子シリーズの第三弾。 今度組まされたのは、吐き気がするくらい嫌なヤツ。若いくせにプライド高く、女性に優しいのは下心あるから。振られたらすぐ切れる、責任感ゼロのクソガキ。『凍える牙』の女性差別オヤジ・滝沢…

ダンテ・クラブ(マシュー・バール)

1321年に完成したダンテの「神曲」。「有名なのに実際にはほとんど読まれていない本」として、上位にランクインしているようです。 それはさておき、1865年にダンテ生誕600年事業として米訳版が出版されるまで、アメリカでは、ダンテはほとんど知…

空中庭園(角田光代)

京橋家は、郊外のダンチで暮らす普通の一家。両親と、高校生の娘と、中学生の弟。「家族の間では何事も隠さない」という、気持ちの悪い家族。この一家、娘に対して、「あなたが仕込まれたのは『野猿モーテル』」なんてことまで話してしまうんですね。 ところ…

グッドラック(アレックス・ロビラ)

チラッと見て「ファンタジー系?」と思って借りてきた本は、なんとビジネスマンへの心構えを説いた「教訓的」な内容でした。 公園のベンチで、50年ぶりに幼馴染が出会います。成功したマックスと、仕事も財産も失ったジム。マックスがジムに語る「祖父から…

機械じかけの猫(トリイ・ヘイデン)

9歳の少年コナーの治療を依頼された精神科医ジェームズ。自閉症と診断されたコナーは、ぬいぐるみのネコを決して手放さず、「ネコは何でも知っている」という意味不明の言葉をつぶやくだけ。コナーの母親ローラは有名な作家。彼女自身、子供時代から、現実…