著者者はクロアチアの女性ジャーナリスト。旧ユーゴ解体直後の、クロアチア・セルヴィア内戦と、それに続くボスニア・ヘルツェゴビナ内戦の時代に、迫り来る戦争の恐怖を書いたエッセイ集です。
たとえば、戦争はこのように始まるのです。「人種間の争いで、最初に亡くなった人の記事には名前があった。次のニュースでは、戦死者はもう人数だけで表示されていた」。
そして、戦争は人の心を変えてしまいます。「1月前には壁紙を変えようと思っていたのに、今日はもう、将来のことなんて何も考えられなくなる」。
ウィーンからのバルカン特急の中で、人は皆ひたすら沈黙を続けます。「言葉を交わしたら、隣の人が、どこの国の人かわかってしまうから」。
国境から避難してきた友に、ハイヒールをあげた娘を叱ってしまって後悔します。「どうして難民には普通の生活はふさわしくないなどと思ってしまったのだろう」。
10年以上前に書かれた本ですが、今でも新鮮です。アフガンで、イラクで、パレスチナで、チェチェンで、スーダンで、ソマリアで・・戦争は終わっていないのですから。隣国が核武装をほのめかし、隣国で反日デモが起きる時代。私たちの今が「戦前」ではないことを強く願います。
2005/6