りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

凍りついた香り(小川洋子)

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「調香士」の彼が、突然自殺してしまった。存在も知らなかった彼の弟と会い、聞かされていた彼の経歴は、ことごとく嘘だったことを知ってしまいます。

さぁ、どうする? 彼女の場合は、彼の「真実の姿」をたどる旅をはじめるのです。それは彼の死を受け入れるために必要な儀式だったのでしょうか。

まだ16才だった彼の人生を変えてしまったのはプラハ。数学の天才で、スケートの達人だった彼の人生を変えた謎は、「香りの記憶」と結びついていました。

読後感は? 実はちょっと不満。「香りと結びついた記憶をたどる」という趣向は悪くないけれど、彼の行動に必然性を感じることが出来なかったのです。

教育ママのエゴと、ママをかばっての犠牲的行為。そんなことで、今までの人生を捨てたくなるんですか? でもスケートは捨てていなかった訳だし、乗物恐怖症だって説明されていませんよ。「プラハでの事件」で既に、彼は壊れてしまっていたということなのでしょうか。

次に予約した『博士の愛した数式』に期待です。小川さんのしっとりとした丁寧な文体は、好きですので、

2005/6