りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

トリック(エマヌエル・ベルクマン)

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20世紀初頭のプラハで貧しいラビの家に生まれ。サーカス団に飛び込んて奇術師となったモシェ。21世紀初頭のロサンジェルスで、両親の離婚に苦しむ少年マックス。「永遠の愛の魔法」を得意にしたという
モシェがロスの高齢者施設で生きていることを知ったマックスは、ついに彼を探し出すのですが・・。

 

物語は、モシェがたどった人生を振り返っていきます。なぜ彼は母親の死後、厳格な父親のことを飛び出したのか。両親のもとから離れたのか。プラハからドレスデンへ、そしてベルリンへと向かったモシェは、どのようにして奇術師として独立し、ナチスを欺いたのか。仇敵によって正体を明かされたモシェは、どのようにして強制収容所を生き延び、戦後アメリカに渡ることができたのか。

 

そして老いたモシェはついにマックスと出会うのですが、「永遠の愛の魔法」などもちろんトリックにしかすぎません。マックスの両親を前にして震える手で奇術を始めたモシェでしたが、そこで本当の奇跡が起こるのです。「時空を超えた愛の魔法」の真実とは、いったいどのようなものだったのでしょう。人は誰しも特別な、奇跡の人生を生きているのですね。持ち込み原稿を10年間断られ続けた末に出版にこぎつけ、ベストセラーとなった本書の運命も、ひとつの奇跡です。

 

2019/7