りぼんの読書ノート

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母親ウエスタン(原田ひ香)

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悪漢たちの横暴から家族を守った流れ者が、少年の呼び声を振り切って去っていくのが、ウエスタン映画の傑作「シェーン」のラストシーンでした。本書の主人公である広美は、母のいない問題家庭を転々と渡り歩き、家庭が軌道に乗ると人知れず去っていく「現代のシェーン」。だから「母親ウエスタン」なのです。

 

短いときは数か月、長くとも数年、父子家庭の母親役を務める女性とは、母性に溢れた存在なのか。それとも母性が壊れてしまっているのか。少なくとも子供たちにとっては、実の母以上の女神であると同時に、突然姿を消す残酷な悪魔でもあったようです。

 

映画「シェーン」は別離の場面で終わりますが、彼の老後はどうなったのでしょう。本書における「その後の広美」は、自分の幸せを掴むことができるのでしょうか。こういう作品は、何の予備知識も持たずに読む方がいいですね。流れ者の広美の物語と、様子がおかしくなった恋人の祐理を心配するあおいの物語が、後半に結びつくあたりで仕掛けに気付いた次第です。それを思うと、ちょっと書きすぎたかもしれません。

 

2019/7