りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

#毎月のベスト本

2019/8 Best 3

8月12日に、はてなブログに引っ越してきました。まだリンクの張り方もよくわかっていないし、過去記事の検索すら思うようにできない状態です。膨大な目次システムをどうメンテしていけばよいのか、途方に暮れています。 1.声の物語(クリスティーナ・ダ…

2019/7 天冥の標10.青葉よ豊かなれ Part 3(小川一水)

「YAHOOブログ」から「はてなブログ」に引っ越す予定ですが、索引の修正が大変そう。少し読書ペースを落としてでも、新しいブログに手を入れなくてはいけないのかもしれません。 1.天冥の標10.青葉よ豊かなれ Part 3(小川一水) 全宇宙的な対立軸…

2019/6 雲上雲下(朝井まかて)

いつどこにブログ移転をしたら良いのか、まだ決断がつきません。読書レビューを書いていても落ち着かない日々が続いています。 1.雲上雲下(朝井まかて) 深い山の中、自分の正体も忘れ去った巨大な草が、突然現れた子狐の依頼で物語を語り始めます。民話…

2019/5 郝景芳短篇集(ハオ・ジンファン)

7年近い大阪生活を終えて、東京に戻ってきました。正しくは千葉ですけれど。吹田市の図書館にはたいへんお世話になりました。あらためて浦安市の図書館にお世話になります。リアルの引越しも大変でしたが、ブログの引越しをどうしたらよいか、まだ悩んでい…

2019/4 ゲームの王国(小川哲)

今月は「ディストピア小説の嚆矢」と言われる『一九八四年』をはじめとして、オーウェルの思想を発展させた作品を多く読みました。ウィンストン・スミスが最後には洗脳されてしまったように、真に恐れるべきは「監視社会」よりも「自意識の喪失」なのでしょ…

2019/3 熱帯(森見登美彦)

今月の読書を振り返るより、Yahooブログが閉鎖されるというニュースにショックを受けています。15年かけて4000冊近く書き溜めたレビューを移転しても、苦労して維持している索引機能は失われてしまうし、何よりブログ人口が減っている中で移転先だって…

2019/2 アグルーカの行方(角幡唯介)

年末年始の読書量が少なかったせいで、2月にアップしたレビューは低調でした。そんな中でも今月の収穫は、角幡唯介さんという現代の冒険家を知ったこと。秘境の名にふさわしい地域が激減した今日においてもまだ、未踏査とされる地域は残されているのですね…

2019/1 恥辱(J・M・クッツェー)

「今年もたくさん読むぞっ!!」などとメッセージを書いてしまったのに、年末年始休暇の間にほとんど読書が進みませんでした。特に忙しかったわけでも、疲れていたわけでもないのですが、何となく気乗りしなかったのです。おかげで箱根駅伝をじっくり見てし…

2018 My Best Books

今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみました。 長編小説部門(海外) 悪童日記(アゴタ・クリストフ) 国境の街で戦時を生きびた双子の少年を描いた、30年以上前に刊行された作品ですが、今読んでも感動的です。著者の自伝的な体験に隠さ…

2018/12 みかづき(森絵都)

『真夜中の子供たち(サルマン・ラシュディ)』が世界的に高い評価を得ている理由は、読めばわかります。祖国インドへの報われない愛情が、奇想の中からひしひしと伝わってくる強烈な作品でした。 社会派SFの巨匠であるニール・スティーヴンスンの新作の骨…

2018/11 ギリシア人の物語3(塩野七生)

今月はシリーズ完結作を2つ読みました。ひとつは塩野七生さんが2015年から書き綴った『ギリシア人の物語』。著者はこれで「歴史エッセイ」の執筆を終えると語っていますので、これは『ルネサンスの女たち』以来50年に渡る長いシリーズの最終巻と位置…

2018/10 腐れ梅(澤田瞳子)

2010年にデビューしてから、早くも2度も直木賞候補となった澤田瞳子さんが一皮剥けた感じです。どれも昨年刊行された作品で、半歩遅れて読んでいる感じですが、宮部みゆきさんや、桐野夏生さんや、ル・カレさんの新作を抑えて今月の1位とするにふさわ…

2018/9 かがみの孤城(辻村深月)

8月に引き続いて、9月もSFやファンタジー的な作品が多めでした。暑いときにはSFに限るのです。とはいえ本格ハードSFは『シルトの梯子』だけで、辻村深月さん、川上弘美さん、堀川アサコさん、ル=グィンさんらの作品は、ファンタジー的な要素が強め…

2018/8 火星の人(アンディ・ウィアー)

8月にはSF作品をたくさんアップしました。暑い夏を乗り切るには、SFに限りますね。スピルバーグが監督した映画「Ready Player One」の原作者であるアーネスト・クラインさんのオタクぶりも、リドリー・コットが監督した「オデッセイ」の原作者であるア…

2018/7 女王ロアーナ、神秘の炎(ウンベルト・エーコ)

今月の1位に選んだのは、2016年に亡くなったウンベルト・エーコ氏の小説の中で、最後に翻訳出版された作品です。実は最後の小説は『ヌメロ・ゼロ』なのですが、そこでも「記憶こそ私たちの魂」と言い切った著者が、記憶の回復をテーマとして扱った自伝…

2018/6 「 i 」 (西加奈子)

6月にアップしたレビューは、5月の長期出張の際に読んだ軽めの文庫本が中心です。そのせいでベストを3冊も選ぶのに苦しんだのですが、こういう月もあるということで・・。 1.「 i 」 (西加奈子) 「この世界にアイは存在しません」という冒頭の一言が…

2018/5 ソロ(ラーナー・ダスグプタ)

5月は「二部構造」の作品が上位に並びました。第1部の悲惨な過去を、第2部の白昼夢が美しく奏でていく『ソロ』と、第1部で夫の視点から語られた幸福な結婚生活を、第2部の妻の視点が覆していく『運命と復讐』。どちらも重層的な構造を持ちながら、読後…

2018/4 悪童日記(アゴタ・クリストフ)

最近「ハヤカワepi文庫」を読み始めました。16巻で発行終了してしまったような「ハヤカワepiブックプラネット」が新作を揃えていたのに対し、「epi文庫」は往年の名作も含んでいるのです。文庫収録前に読んだ作品も加えると、既刊93作の40%程度が既読…

2018/3 わたしの本当の子どもたち(ジョー・ウォルトン)

国書刊行会から「ウィリアム・トレヴァー・コレクション」の第3弾が発行されました。2016年11月に亡くなられたアイルランド出身の巨匠ですが、未訳の作品も多いので、今後も継続して欲しいものです。 今月の一位としたジョー・ウォルトンさんの作品を…

2018/2 オープン・シティ(テジュ・コール)

「口訳万葉集(折口信夫)」、「百人一首(小池昌子)」、「新々百人一首(丸谷才一)」が収録されている、池澤夏樹編「日本文学全集 第2巻」を読みました。日ごろ縁遠い和歌の世界の奥深さを、垣間見させていただきました。 1.オープン・シティ(テジュ…

2018/1 BUTTER(柚木麻子)

1月は、巨匠の新作からベストセラーとなった芥川賞受賞作まで、たくさんの素晴らしい本と出会えました。なかでも1位とした柚木さんの作品は、現代日本社会の窮屈さを吹き飛ばすような快作だったと思います。次点には、昨年話題となった「将棋界」のノンフ…

2017 My Best Books

今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみました。 長編小説部門(海外) 鬼殺し(甘耀明)カン・ヤオミン上巻 下巻 日本による統治から中国国民党による支配への移行という動乱期を生きた台湾の少年は、なぜこの地に魂魄を残していた「鬼王」…

2017/12 スウィングしなけりゃ意味がない(佐藤亜紀)

徹底した歴史考証を背景に押しこめて余計な説明を排除する佐藤亜紀さんの新作は、期待にたがわず素晴らしい作品でした。文句なしに今月の1位とさせていただきます。 言語と小説が生まれる過程を考察した『プロローグ』は、もはやSFですね。ネットワーク化…

2017/11 騎士団長殺し(村上春樹)

毎回同じストーリーとか、伏線が回収されないとか、不自然さが目立つとか、ジャンル小説に敬意が足りないなどの批判もあるのですが、やはり村上春樹ワールドは素晴らしいのです。ついでに「村上春樹のエピゴーネン」とも言われる伊坂幸太郎さんの作品をまと…

2017/10 鬼殺し(甘耀明)

冲方丁さんの最後のラノベという「シュピーゲル・シリーズ」が完結しました。10年に渡って書き継がれたため、物語の想定年であった2016年を現実が追い越してしまったとのこと。さすがに「転送技術」は実用化されていませんね。全13巻分を纏めて「特…

2017/9 私の名前はルーシー・バートン(エリザベス・ストラウト)

9月にアップしたレビューは、8月に読んだ本が中心です。暑いと軽めの作品が多くなりますね。今月は「次点なし」です。 1.私の名前はルーシー・バートン(エリザベス・ストラウト) 著者自身を彷彿とさせる架空の女性、ルーシー・バートンが、自分自身を…

2017/8 「日本文学全集9」平家物語(古川日出男訳)

8月の1位には、古川日出男さんの新訳による『平家物語』を選びました。古川さん独特の「ボイス」が、源平合戦の軍記部分の疾走感にも、滅びゆく者たちへの鎮魂部分の哀悼感にも、見事に嵌っていたと思います。素晴らしい人選でした。 3位にあげた加納朋子…

2017/7 ジュリエット(アリス・マンロー)

2013年に絶筆を宣言したアリス・マンローさんには、まだまだ未翻訳の短編集があるようです。2004年の作品である『ジュリエット』は、映画化を機に出版されたようですが、今後の邦訳にも期待したいものです。 グレッグ・イーガンの「直交宇宙3部作」…

2017/6 本を読むひと(アリス・フェルネ)

故水木しげる氏の一周忌にあたる2016年11月に出版された京極夏彦さんの『虚実妖怪百物語』は、実在の人物も数多く登場して大騒動を繰り広げる、紙上の大法要ともいうべき作品でした。タイミングを逃しましたが、生涯戦争反対を訴え続けた水木しげる氏…

2017/5 恋と夏(ウィリアム・トレヴァー)

ベンガル語も英語も捨てて、新たに学び始めたイタリア語で綴ったという、ジュンパ・ラヒリさんのエッセイの評価には最後まで悩みました。優しい実母からも完璧な継母からも逃げ出して、自分で選んだ恋人と新しい生活をはじめたようなもの。それでも、これま…