りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2018/3 わたしの本当の子どもたち(ジョー・ウォルトン)

国書刊行会から「ウィリアム・トレヴァー・コレクション」の第3弾が発行されました。2016年11月に亡くなられたアイルランド出身の巨匠ですが、未訳の作品も多いので、今後も継続して欲しいものです。

今月の一位としたジョー・ウォルトンさんの作品をジャンル分けすると「SF」ということになるのでしょうが、『ファージング三部作』や『図書室の魔法』など、SFファン以外にもお勧めしたい素晴らしい作品を描き続けている方です。やはり、未訳作品の翻訳を続けて欲しい作家のひとりです。


1.わたしの本当の子どもたち(ジョー・ウォルトン)
1949年、恋人マークから乱暴な求婚を受けたパトリシアの答えによって、彼女の人生は2つに分裂してしまいます。マークとの不幸な結婚生活に耐える人生と、真のパートナーと巡り合って幸福な生活をおくった人生。しかしそれに合わせて、世界がたどる歴史も変わってしまったのでした。そして彼女の人生が終わる時に、残された世界はどのようになっているのでしょう。本書が提起するテーマは、単純な二者択一ではないのです。

2.夜の谷を行く(桐野夏生)
ひっそりと余生を過ごしていた、かつての連合赤軍の女性兵士の生活に変化が起きたのは、永田洋子が獄中死した翌月に大震災が起こった2011年のことでした。やがて彼女は、これまで固く封印してきた事実を記憶の底から掬い上げることで、ようやく過去の総括を果たすのです。女性兵士の視点から連合赤軍が内包していた虚構性と矛盾を描いた、意欲作です。

3.謎の独立国家ソマリランド(高野秀行)
武装勢力や海賊が横行する崩壊国家・ソマリアの一角にあって、民主化を進めて平和と治安を維持し続けているという、謎の独立国家。国際的に全く認められていないソマリランドに潜入して、不思議な平和の理由を探った意欲作です。同一民族が争っているソマリアの政治事情を、日本の戦国武将の抗争に例えた説明も秀逸です。




2018/3/30