りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2018/6 「 i 」 (西加奈子)

6月にアップしたレビューは、5月の長期出張の際に読んだ軽めの文庫本が中心です。そのせいでベストを3冊も選ぶのに苦しんだのですが、こういう月もあるということで・・。


1.「 i 」 (西加奈子)
「この世界にアイは存在しません」という冒頭の一言が衝撃的です。「LGBTQ」の「Q(探索状態)」をテーマとする小説を書きはじめたものの、最終的には「Q」以前に存在すべき「I(自分自身)」を肯定できるまでの物語となりました。『サラバ!』と同様に、自分と深く向き合った後に生まれてくる、強い決意と覚悟が込められた作品です。

 

2.その犬の歩むところ(ボストン・テラン)
『神は銃弾』や『音もなく少女は』で、剥き出しの暴力にさらされた者たちのギリギリの抵抗を描いた著者による、数奇な生涯を歩んだ一匹の犬の物語。そこから見えて来るものは、犯罪、虐待、戦争、天災に傷ついたアメリカという国であると同時に、無名の人々の優しさもあったのです。

 

3.公正的戦闘規範(藤井太陽)
名実ともに日本を代表するSF作家である著者の短編集は、量子アルゴリズムの実用化によって「AI」が変貌を遂げようとする近未来の物語が中心になっています。銃規制によって分裂したアメリカを舞台にした「第二内戦」が不気味で楽しい作品でした。「AI」は世界平和をもたらすのでしょうか。

 

 

2018/6/30