8月の1位には、古川日出男さんの新訳による『平家物語』を選びました。古川さん独特の「ボイス」が、源平合戦の軍記部分の疾走感にも、滅びゆく者たちへの鎮魂部分の哀悼感にも、見事に嵌っていたと思います。素晴らしい人選でした。 3位にあげた加納朋子さんの『我ら荒野の七重奏(セプテット)』は、『七人の敵がいる』の続編です。読んでいて元気が出てくる作品です。1.「日本文学全集9」平家物語(古川日出男訳)] (1)、(2)、(3)
「敬語を含めて一文も刈り込まず、煩雑に見える故事の挿話も訳し落とさなかった」と言う古川氏の新訳は、「語り手」の存在を前面に押し出して、ともすれば冗長になりがちな長い物語に、新たな息吹を吹き込んでくれました。平家物語を貫く無常観が、琵琶法師の撥が弾む中で、高らかに唄い上げられています。
2.五月の雪(クセニヤ・メルニク)
オホーツク海に面したロシアの町マガダンには、かつて強制収容所が置かれていたとのこと。1983年にマガダンで生まれ、15歳のとき家族と共にアラスカに移住し、現在はロサンゼルスに在住する著者が、ベーリング海峡を挟んでシベリアとアラスカにまたがる家族の歴史を、紡ぎあげていきます。ジュンパ・ラヒリ、イーユン・リー、ジュノ・ディアスら、著者の上の世代である移民作家たちの系譜に連なる作品です。
オホーツク海に面したロシアの町マガダンには、かつて強制収容所が置かれていたとのこと。1983年にマガダンで生まれ、15歳のとき家族と共にアラスカに移住し、現在はロサンゼルスに在住する著者が、ベーリング海峡を挟んでシベリアとアラスカにまたがる家族の歴史を、紡ぎあげていきます。ジュンパ・ラヒリ、イーユン・リー、ジュノ・ディアスら、著者の上の世代である移民作家たちの系譜に連なる作品です。
3.我ら荒野の七重奏(加納朋子)
中学生になった息子が入ったのは吹奏楽部。「保護者会」の旧態依然たる不合理な運営方式に対して「ブルドーザー陽子」のパワーが炸裂します。前作を出版した直後に難病で入院した著者ですが、パワフルな陽子の奮闘ぶりを書いている間は、病気を忘れていられたとのこと。もちろん読者も元気を貰えます。「子育てという荒野」を行く陽子が、高校生となる息子と向き合っていく続編も期待しています。
中学生になった息子が入ったのは吹奏楽部。「保護者会」の旧態依然たる不合理な運営方式に対して「ブルドーザー陽子」のパワーが炸裂します。前作を出版した直後に難病で入院した著者ですが、パワフルな陽子の奮闘ぶりを書いている間は、病気を忘れていられたとのこと。もちろん読者も元気を貰えます。「子育てという荒野」を行く陽子が、高校生となる息子と向き合っていく続編も期待しています。
【その他今月読んだ本】
・僕僕先生9 恋せよ魂魄(仁木英之)
・僕僕先生10 神仙の告白(仁木英之)
・東京會舘とわたし(上)旧館(辻村深月)
・東京會舘とわたし(下)新館(辻村深月)
・総選挙ホテル(桂望実)
・GOSICK BLUE(桜庭一樹)
・素晴らしいアメリカ野球(フィリップ・ロス)
・八万遠(やまと) (田牧大和)
・心臓異色(中島たい子)
・沢村貞子という人(山崎洋子)
・レインレイン・ボウ(加納朋子)
・皇后ジョゼフィーヌの恋(藤本ひとみ)
・ふたつの海のあいだで(カルミネ・アバーテ)
・蟹工船・党生活者(小林多喜二)
・今ひとたびの、和泉式部(諸田玲子)
・あるいは修羅の十億年(古川日出男)
・坂の途中の家 (角田光代)
・オードリー'sレディの格言(ルーシー・ホリデイ)
・僕僕先生9 恋せよ魂魄(仁木英之)
・僕僕先生10 神仙の告白(仁木英之)
・東京會舘とわたし(上)旧館(辻村深月)
・東京會舘とわたし(下)新館(辻村深月)
・総選挙ホテル(桂望実)
・GOSICK BLUE(桜庭一樹)
・素晴らしいアメリカ野球(フィリップ・ロス)
・八万遠(やまと) (田牧大和)
・心臓異色(中島たい子)
・沢村貞子という人(山崎洋子)
・レインレイン・ボウ(加納朋子)
・皇后ジョゼフィーヌの恋(藤本ひとみ)
・ふたつの海のあいだで(カルミネ・アバーテ)
・蟹工船・党生活者(小林多喜二)
・今ひとたびの、和泉式部(諸田玲子)
・あるいは修羅の十億年(古川日出男)
・坂の途中の家 (角田光代)
・オードリー'sレディの格言(ルーシー・ホリデイ)
2017/8/30