りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2019/2 アグルーカの行方(角幡唯介)

年末年始の読書量が少なかったせいで、2月にアップしたレビューは低調でした。そんな中でも今月の収穫は、角幡唯介さんという現代の冒険家を知ったこと。秘境の名にふさわしい地域が激減した今日においてもまだ、未踏査とされる地域は残されているのですね。3位にあげた『神々の山嶺』の前人未到のエヴェレスト登攀ルートといい、沢木耕太郎さんの『一号線を北上せよ』といい、冒険とか旅には今でもロマンの香りが漂っているのです。自分にできるのは「旅行」程度にすぎませんが。

 

1.アグルーカの行方(角幡唯介)
1845年に北極圏で音信途絶となった英国のフランクリン隊に、生き残った者はいたのでしょうか。チベットニューギニアの未踏査地区を探検した著者が、友人の北極冒険家・荻田泰永氏とともに、フランクリンの航跡や隊員たちの足跡を追って、カナダ極北の不毛地帯の踏破に挑みます。その距離、実に1600キロ!「過酷」と言うもおろか、想像を絶する壮絶な探検記です。

 

2.西欧の東(ミロスラフ・ペンコフ)
すべてのブルガリア人の魂の内側を彩っているのは「ヤッド」という、妬みや悪意や怒りや憤りにも似ている一方で、もっとエレガントで複雑な感情だそうです。オスマントルコによる500年もの支配、第二次バルカン戦争での孤立、ドイツ側に立った両大戦の敗北、ソ連による実質的支配という「負け続けの歴史」が根付かせた感情の真髄を味わえる短編集です。

 

3.神々の山嶺(夢枕獏)
エヴェレスト山頂付近で姿を消したジョージ・マロリーは、初登頂を果たしていたのでしょうか。伝説の孤高の登山家・羽生が、自ら消息を絶ってカトマンドゥに潜伏している目的は何なのでしょう。8000mを越える神々の領域に、人を挑ませるものとは何なのでしょう。新田次郎氏の『孤高の人』と並ぶ、山岳小説の傑作です。

 

 

 

2019/2/27