りぼんの読書ノート

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チャップリン自伝 若き日々(チャップリン)

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チャップリンのことを知らない人などいませんよね。山高帽にだぶだぶのズボン、ちょび髭にステッキというコミカルな姿で、笑いとペーソスを見事に体現した映画王。本書は、チャップリンが75歳の時に自らの半生を振り返った自伝です。

チャップリンは、1889年にロンドンのランベスで生まれました。両親ともミュージックホールの俳優ながら、すぐに両親は離婚。喉をつぶして舞台に立てなくなった母親に育てられた幼少時代は、まるでディケンズ小説の貧困物語。孤児院や貧民院を転々としながら、子供ができるあらゆる職に就き、やがて旅回りの一座の子役にありつきます。

19歳の時に名門劇団に入って若手の看板俳優として人気を博し、やがて劇団のアメリカ巡業の際に映画プロデューサーの目に留まって「キーストン社」に入社。デビュー作における「小柄な放浪者」の扮装が、すっと彼のトレードマークになっていくんですね。そして「金も成功も雪崩のように勢いを増して転がり込んでくる」生活が始まるのです。上巻では、1916年にアメリカ大統領の7倍という破格の年俸でミューチュアル社に迎え入れられるまでが描かれます。

本書が出版された際にゴーストライターの存在を疑う者もいたようですが、「すべての証拠は単一の著者によることを指し示している」とのことです。一読者としては検証などできませんが、貧しい中でも生き生きと暮らしていた少年の姿や、精神に異常をきたすようになった母に対する思いがストレートに伝わってくる自伝であることは感じ取れます。

2019/3