りぼんの読書ノート

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チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々(チャップリン)

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自伝の上巻にあたる若き日々では、貧しい少年時代からアメリカンドリームを掴み取って、破格の条件と年俸でミューチュアル社に迎え入れられるまでが描かれました。

本人は「この頃が一番幸福な時期だったかもしれない」と綴っていますが、「犬の生活」、「担え筒」、「キッド」、「黄金狂時代」、「サーカス」、「街の灯」、「モダンタイムス」、「独裁者」、「殺人狂時代」、「ライムライト」などの円熟期の名作は、その後のファーストナショナル社とユナイテッド・アーティスツ社の時代に多く製作されています。

解説者も触れているように、本書では映画製作過程の秘密などは明かされていません。「キッド」の子役を務めたジャッキー・クーガンや、、エドナ・パーヴァイアンス、リタ・グレイ(2番目の妻)、ヴァージニア・チェリル、ポーレット・ゴダード(3番目の妻)、クレア・ブルームら「チャップリン女優たち」とのエピソードもほんのわずかだけ。ただし1930年代のトーキー革命については、かなり多くを語っています。彼はサイレント主義者ではなく、パントマイム芸こそが世界共通語」という信念の持ち主だったのですね。

その代わりに濃密に綴られるのが、各界有名人との交友です。新聞王ハースト、H・G・ウェルズバーナード・ショーニジンスキーチャーチルアインシュタイン周恩来らとの出会いなどの描写は、まるで有名人自慢のよう。日本訪問の際に、間一髪で五一五事件を逃れたことも触れられます。

そして、マッカーシズムが吹き荒れた戦後のアメリカで社会主義者との非難を浴び、ついには事実上の国外追放命令を受けるに至るのですが、4番目の妻・ウーナや8人の子供たちとスイスで幸福な余生をおくり、晩年には英国でナイトに叙されたことをはじめとして各国から叙勲を受け、名誉アカデミー賞を受けてアメリカにも再上陸を果たしたことは何よりです。著名な定番作品でも数本が未見ですので、機会を設けて見ておかないといけませんね。

2019/3