りぼんの読書ノート

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2018/11 ギリシア人の物語3(塩野七生)

今月はシリーズ完結作を2つ読みました。ひとつは塩野七生さんが2015年から書き綴った『ギリシア人の物語』。著者はこれで「歴史エッセイ」の執筆を終えると語っていますので、これは『ルネサンスの女たち』以来50年に渡る長いシリーズの最終巻と位置付けられるのかもしれません。もうひとつはジェフリー・アーチャー氏の『クリフトン年代記』。著者の分身と思しき主人公の壮烈な一代記は、現代イギリスの政治社会史ともいえるでしょう。


1.ギリシア人の物語3(塩野七生)
キリスト教やデモクラシーという西洋近代史観に縛られることなく、それぞれの時代に現実的・合理的であったことに重きを置く「塩野史観」は、最後の最後まで健在でした。最近ではイタリア紹介番組の解説者としてのTV出演機会も、めっきり減らされていたので心配していたのですが、全くの杞憂でしたね。巻末の「歴史エッセイ」年表を見ていたら、もう一度全巻を再読してみたくなりました。

 

2.知の果てへの旅(マーカス・デュ・ソートイ)
オクスフォード大学教授にしてイギリス王立協会フェローである数学者が、「人間に知りえないこと」の最先端をわかりやすく解説してくれた作品です。、「未来予測、最少素粒子、量子物理学、宇宙の果て、時間の性質、意識のハードシップ、無限の限界」の7テーマだけ見ても気が遠くなる思いがしますが、解説は平易です。「知り得ぬものについいては想像力を働かすことができる」との科学的楽観主義の姿勢にも夢を感じられます。

 

3.遺訓(佐藤賢一)
明治維新政府の敵とされた元庄内藩士たちが、なぜ西郷隆盛の「遺訓」を編纂し、上野の銅像を立てる際の発起人となったのでしょう。フランス歴史小説の第一人者である著者が、『新徴組』に続いて明治初期の秘話を小説化した渾身の作品です。著者は、山形県鶴岡市の出身なのです。

 

 

 

2018/11/30