りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2017/9 私の名前はルーシー・バートン(エリザベス・ストラウト)

9月にアップしたレビューは、8月に読んだ本が中心です。暑いと軽めの作品が多くなりますね。今月は「次点なし」です。
1.私の名前はルーシー・バートン(エリザベス・ストラウト)
著者自身を彷彿とさせる架空の女性、ルーシー・バートンが、自分自身を小説家として宣言するに至る回想記です。家族と共に故郷で暮らした時代の思い出を再構成させるきっかけとなった、入院時に見舞いに来た母親との会話。街で出会った女性作家のワークショップに参加して、作家の現実の姿に触れたこと。感情を抑えて書かれた作品ですが、作家を作家たらしめるものについてのヒントが溢れているようです。

2.独りでいるより優しくて(イーユン・リー)
天安門事件で将来を閉ざされた、当時の女子大生が、21年もの入院生活を送った後に死亡。当時高校生だった3人の男女は、なぜこの事件に責任を感じて、それぞれに孤独な人生を歩んでいたのでしょう。彼らは、彼女の死をきっかけにして「孤独よりも大切なもの」を見つけることができるのでしょうか。本書は、天安門事件の世代を見捨てて、その後の中国の繁栄を謳歌している世代の自責の念が凝結した作品であるように思えてきます。

3.ナオミとカナコ(奥田英朗)
DV夫に支配されている親友を救出すべく、「男の排除」に乗り出した女性たち。桐野夏生さんの『OUT』を思い出しますが、映画「テルマ&ルイーズ」のほうが近いかもしれません。帯に「やがて読者も二人の〈共犯者〉になる」とありますが、犯罪者となる女性たちに共感を抱かせるような展開が見事でした。TVドラマ化をされています。


2017/9/30