りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-19から1日間の記事一覧

鏡の影(佐藤亜紀)

16世紀のドイツ、宗教戦争と農民戦争の時代。レヴニッツのヨハネスは、魔性の少年・シュピーゲルグランツと「魂の契約」を交わして、秘密の図表の解読を試みる。それは「世界の全てを表し、世界を変えられる」という秘儀。 彼が出会うのは、錬金術師、伯爵…

水滸伝18(北方謙三)

このシリーズも長いなぁ。梁山泊の主要人物108人のうち、宋との激選の中ですでに半数が亡くなっています。この巻ではなんと、一番好きだった「彼」までもが戦死してしまい、大ショック。 一方で、オリジナルには出てこない人物も登場してきます。その筆頭…

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ(遥洋子)

誰かがこの本について、怖い言葉が3つも入っていると言いました。「東大」と「ケンカ」と、もうひとつはもちろん「上野千鶴子」。フェミニズムの闘士で、日本で一番怖いといわれる女性・・・。 なんと、タレントさんが、東大の上野千鶴子ゼミで3年間学ぶ。…

魔術師(ジェフリー・ディーヴァー)

四肢麻痺で、小指しか動かせない科学捜査官「ライム」が主人公。恋人兼助手の警官アメリアが実捜査を受け持ち、コンビで問題を解決。初めて読みましたが、ミステリーシリーズの5作目だそうです。『ボーン・コレクター』や『コフィン・ダンサー』もこのシリ…

日暮らし(宮部みゆき)

ぼんくら同心と超美形の甥が活躍する『ぼんくら』の続編です。絶対に『ぼんくら』→『日暮らし』の順番で読むこと! 前作で起きた「鉄瓶長屋の取り壊し騒動」の根にあった湊屋の主人と妻・妾の愛憎問題は、一応の解決を見たのですが、ひとり、真相を知らされ…

ルネサンスの女たち(塩野七生)

「ルネサンスの女たち」は塩野さんの処女作。イタリア・ルネサンス期に生きた4人の女性を取り上げて紹介してくれます。 1人目がイザベッラ・デステ。権謀術数うずまくこの時代に、女手ひとつでフェラーラを維持し、ルネサンス芸術のパトロンとしても有名な…

国際テロ(トム・クランシー)

あ~あ、またトム・クランシーを読んじゃった。彼の本が面白かったのは、「ライアン・シリーズ」の『恐怖の総和』」までと『容赦なく』。わかっているのですが、『教皇暗殺』以来のジャック・ライアンものだし、共著じゃないので、つい期待してしまったので…

人が見たら蛙に化れ(村田喜代子)

朝日新聞に連載されていた頃から気になっていた小説です。 骨董品にとりつかれた3組の夫婦。彼らの楽しみは、掘り出し物を見つけ出すこと。他の人が見たらただの蛙でも、自分なら価値を見出せる。伊万里、有田、唐津を抱える「焼き物王国」の北九州に始まっ…

光の帝国~常野物語(恩田陸)

「光の帝国」なんていうと、ダース・ベイダー相手に宇宙船間ヤマトが戦うみたいな印象ですが、しっとりした作品です。 不思議な能力を持っている、「常野(とこの)」の人々の物語。一族のそれぞれの家系には、みな異なった能力が伝わっています。記憶を読み…

千年の黙(森谷明子)

以前、ラナさんが紹介していた本。タイトルは「千年の黙(しじま)」と読みます。ラナさんには不評だったようですが、私は楽しめました。 源氏物語の第一帖「桐壺」と第二帖「若紫」の間には、「かかやく日の宮」という失われた物語があったという説は、江戸…

越境(コーマック・マッカーシー)

『すべての美しい馬』に続く、「国境3部作」の2作目です。驚くべきことに、第1作の登場人物はひとりも出てきません。時代は10年ほど遡って1930年代。 16歳のビリーは罠にかかったオオカミに神々しさを感じ、故郷の山に帰してやろうと、ひとりメキ…

女の議会(アリストファーネス)

「ギリシャ悲劇」のあとは「ギリシャ喜劇」の代表作を。先の『オイディプス』からは、数百年あとの作品です。短い戯曲なのですが、旧字体と脚注の多さにめげそうになった・・。さすがに岩波文庫です(謎)。 古代の民主社会の理想のように言われているアテネ…

オイディプス/アンティゴネ(ソフォクレス)

福田恒存さんの名訳によるギリシャ悲劇。予言を避けようとして、かえって予言を成就させてしまうオイディプス王の悲劇と、その娘アンティゴネの物語。 「父を殺して母を娶るだろう」との忌まわしい予言を授かって、オイディプスはコリントを出奔。人々を苦し…

1809ナポレオン暗殺(佐藤亜紀)

皇帝即位(1804)からモスクワ遠征(1812)までがナポレオンの絶頂期。といっても、イギリスとは対峙し続け、ロシア本土はまだ無傷。スペインではゲリラ戦に悩まされ、解体されたはずのオーストリアでも軍の蠢動は続いていて、戦いが休まるときはありません。 そ…

フォー・ユア・プレジャー(柴田よしき)

新宿2丁目で無認可保育園を経営する私立探偵・花咲シリーズ第2作。彼が巻き込まれる事件は、第1作にもましてヒートアップ。前作で「にこにこ園」は4000万円ものヤバイ借金を作ってしまい、花咲は、裏家業である探偵業の手を抜くわけにはいきません。 …

バルタザールの遍歴(佐藤亜紀)

佐藤亜紀さんのデビュー作です。29歳でこんな小説を書いたのですね。 バルタザールとメルヒオールは、一つの身体を共有する双子。さらには、物理的な身体を抜け出す能力まで持っている。オーストリア・ウィーンの侯爵家に生まれた不思議な双子が、退廃に身…

ブラック・ダリア(ジェームズ・エルロイ)

エルロイの「LA4部作」の第1作。ちなみに第3作は「LAコンフィデンシャル」で、ラッセル・クロウ、ケビン・スペイシー、キム・ベイジンガーといった豪華キャストで映画化されています。 「元ボクサーの警官:バッキー・ブライチャート」が、黒髪で黒服…

魂萌え!(桐野夏生)

「犯罪小説家」のイメージがあった桐野さんですが、この作品では、一転して「老いの問題」に向き合いました。1日で読んでしまったのが惜しまれる名作です。 平凡な生活を送っていた59歳の主婦・敏子の夫が急死。同居を迫る長男夫婦や、生活の定まっていな…

ゲノムの方舟(佐々木敏)

ガラがこの作者(別の本ですが)を紹介していたので、読んでみました。 世界の人口は64億人だそうです。20年で30%も増加。途上国が多産少死となり、人口大国の中国・インドが成長軌道に乗り、資源、環境はもとより、水、食料までも問題になりつつある…

フォー・ディア・ライフ(柴田よしき)

新宿2丁目で無許可保育園を営む探偵っていうだけで興味湧くなぁ。東京に住んでいる者にとっても、「新宿の裏社会」は謎めいているのです。 「裏社会の街にも人は住んでいて、子供もいる」。その通りですよね。でも、その子供たちの親は、不法就労の外国人女…

悠久の窓(ロバート・ゴダード)

主人公がパレオゴロス一族というので読んでみました。1453年にオスマン帝国によって滅亡させられたビザンチン皇帝の末裔です。 イギリスの片田舎に移住してひっそりと生きのびていた一族に、農園の邸宅を破格の値段で買い取りたいとの提案が持ち込まれま…

魅せられたる魂(ロマン・ロラン)

「ジャン・クリストフ」と並ぶ、ロマン・ロランの不朽の名作。第一次世界大戦前後のパリを舞台にして、ブルジョアジーの没落とプロレタリアートの台頭の時代を生きた女性を描く、感動の大河ドラマです。 父の死と破産の結果、生活のために働く未婚の母・アン…

九十三年(ヴィクトル・ユゴー)

19世紀の大本格小説『レ・ミゼラブル』で有名なユゴー先生が、晩年の70歳の時に書いた最後の長編。 もちろん「93年」とは、1793年のこと。ルイ16世と王妃アントワネットの処刑によってはじまったこの年、フランス革命は大きな危機を迎えます。国…

間宮兄弟(江國香織)

ひょっとしたら「初江國」かもしれません。 35歳の兄・明信と、32歳の弟・徹信。誠実で好印象は与えるけど、女性にはもてない2人兄弟。この2人にも女性と付き合うチャンスが訪れます。不倫を清算しようと悩む女教師・依子。彼の不誠実さに悩むビデオ屋…

ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹(ジェフリー・ユージェニデス)

タイトルも作者名も長い! 「13歳から17歳の年子の美人姉妹が、次々に自殺していく。ぼくたちは、それを横で見ていてどうすることもできなかった・・」。20年前に起きた衝撃的な出来事の思い出をたどり、「彼女たちを復活させるピースは決してみつから…

ひまわりの祝祭(藤原伊織)

この作者の本は『テロリストのパラソル』以来、2冊目ですが、「最愛の者を失い、ずぶずぶに落ち込んでる男」というプロットは共通しています。 この本の興味を繋ぐのは、ゴッホの8枚目の「ひまわり」。バブル期に破格の値段で取引され話題になった「ひまわ…

博士の愛した数式(小川洋子)

整数論というのは「数学の女王」だそうです。理論が美しいことが理由のようですが、言葉も美しい。完全数、友愛数、婚約数、双子素数など、むしろ文学的。数字そのものに、特別の意味と関係があるかのようです。 事故以来、元数学者の「博士」の世界は凍って…

ホワイト・ティース(ゼイディ・スミス)

作者のゼイディーは1975年生まれで、イギリス人の父とジャマイカ人の母を持つ、ロンドン生まれの混血美女。この本を書いたときは24歳だそうです。 「ロンドンの20世紀は客人の世紀だった」。つまり世界中の大英帝国から、移民を受け入れて来たわけで…