りぼんの読書ノート

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千年の黙(森谷明子)

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以前、ラナさんが紹介していた本。タイトルは「千年の黙(しじま)」と読みます。ラナさんには不評だったようですが、私は楽しめました。

源氏物語の第一帖「桐壺」と第二帖「若紫」の間には、「かかやく日の宮」という失われた物語があったという説は、江戸時代に本居宣長によって唱えられていたそうです。この本は、なぜそれが失われたのかを大胆に推理したもの。作者の紫式部みずからを、探偵役として登場させたのがいいですね。

第一部では、藤原道長によって追い落とされそうな皇后・定子の愛猫が盗まれた事件を、式部に解決させる傍ら宮中の勢力関係を説明し、源氏物語が評判になっていく様子と、そのストーリーを苦々しく思う勢力の存在を描き出します。

第二部では、誰が何のために「かかやく日の宮」を消し去ろうとしているのかを式部に推理させるだけでなく、真相に気付いた彼女がなぜそんな仕打ちに甘んじたのか、二重の大胆な推理が展開されるのです。

道長の娘、中宮・彰子のキャラもいいですね。父・道長のロボットでもなく、いたずらに反発するでもなく、自分の境遇を受け止めて、明るく振舞いながら周囲を気遣う。彰子がファンだったので「源氏物語」が広がったという説もありますし。式部に仕える「女童あてき(長じて小少将)」も魅力的です。平安女性たちを、現代的に生き生きと描き出してくれました。

2005/8/27読了