りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

越境(コーマック・マッカーシー)

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『すべての美しい馬』に続く、「国境3部作」の2作目です。驚くべきことに、第1作の登場人物はひとりも出てきません。時代は10年ほど遡って1930年代。

16歳のビリーは罠にかかったオオカミに神々しさを感じ、故郷の山に帰してやろうと、ひとりメキシコに向かいます。ところが山に入る前の田舎町で悪徳署長らにつかまって、オオカミは見世物として惨殺されてしまうのです。

失意のうちに帰国したビリーを待っていたのは、馬泥棒に両親が殺されていたという悲報。ビリーは、馬を取り返すため、生き残った弟を連れて再度の越境。彼らはそこで「神話的なまでに残酷な」孤独と出会うことになるのですが・・。

本書におけるメキシコとは、現実の国家を意味するのではなく、何かを越えてしまった、その先にあるものの象徴なのでしょう。彼らが出会う人たちも、不思議に実在感に欠けているのです。ジプシー、盗賊、奇妙な体験を語る老人、孤独な少女・・。

まるで「ガルシア=マルケス」のような南米文学の香り。第1部が、荒々しいリアリスティックに満ちていたのとは対照的でした。ちょっとイメージ違っちゃったな。

しかし、第3部『平原の街』では、第1部の主人公、ジョン・グレイディが再登場。10歳ほど年長のビリーと出会う物語だそうです。やっぱり、最後まで読まないと。

2005/8