りぼんの読書ノート

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ひまわりの祝祭(藤原伊織)

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この作者の本は『テロリストのパラソル』以来、2冊目ですが、「最愛の者を失い、ずぶずぶに落ち込んでる男」というプロットは共通しています。

この本の興味を繋ぐのは、ゴッホの8枚目の「ひまわり」。バブル期に破格の値段で取引され話題になった「ひまわり」ですが、一瓶の葡萄酒と引き換えに日本人画学生が手に入れたもう1枚があったという設定。しかも、その画学生とは、主人公の亡き妻の祖父だったというのです。

ということで、主人公は「ひまわり」をめぐる争いに巻き込まれていきます。バブル期に絵画投資で大火傷をした「ノンバンクの社長」や、才能の限界から画壇から転じて裏社会に生きる「大物」が、主人公の勤めていた広告代理店の先輩などとからんで展開される「ひまわり」争奪戦。

絵画に関わる本は好きなのですが、ちょっと物足りなかったのは、主人公が訳わからなすぎるから。色んな才能あるのに人生を投げてる人を見ると、意地が焼けてしまうのです。この主人公のようなニヒリズムは、全共闘世代の感傷なのでしょうか。あと、せっかく亡き妻に瓜二つの女性を出しておいて、あんな扱いはないよなぁ。

2005/8