りぼんの読書ノート

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古書奇譚(チャーリー・ラヴェット)

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シェイクスピアの正体については、「ストラットフォード出身のシャクスピア」ではないと考える「別人説」が複数あって、それぞれ「論拠」を展開しているものの決め手がないというのが実情のようです。そんな中で、大文豪の正体を明らかにする自筆本の存在は、まさに「聖杯」なのでしょう。

愛妻アマンダを失くしてから生きる気力を失っていたアメリカ人の古書商ピーターは、コッツウォルズ古書店で、前ラファエロ派の手による亡き妻そっくりの貴婦人の肖像画を手に入れます。100年も前の肖像画がなぜ妻に似ているのか。その疑問は、大論争に決着をつける奇書へと、ピーターを導いていきます。

シェイクスピアが『冬物語』の原作とした『パンドスト』初版本には、シェイクスピア本人による書き込みとサインが記されていたのです。そして歴代の所有者を記したリストには、肖像画と同じ筆跡で「B・B」のサインが・・。

果たしてこれは「聖杯」なのか。それとも精巧な偽書なのか。妻そっくりの肖像画には、どのような秘密が隠されているのか。現代の奇書探索物語と、10年前にピーターとアマンダが出会った物語と、400年前に遡っての『パンドスト』初版本を巡る物語とが、並行して進みます。

一番おもしろかったのは、400年前から続く物語ですね。シェイクスピア本人も登場するのをはじめ、駆け出しの頃の彼を見下すエリート集団の末路や、100年前の道ならぬ恋など、癖のある人物が次々と登場し、それがそのまま「謎解き」になっていますので。ピーターとアマンダの恋愛部分は、いかにも「アメリカ的」で浮いていたようにも思えます。

2016/10