りぼんの読書ノート

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巡礼者たち(エリザベス・ギルバート)

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ジュリア・ロバーツ主演の映画「食べて、祈って、恋をして」の原作者として、最近名前を聞いた著者による、クレスト・ブックス初期の短編集。アメリカ各地に点在する主人公たちの、とまどい、ためらい、決断の瞬間を鮮やかに切り取った作品が光っています。

「巡礼者たち」ロッキー山脈の麓に単身飛び込んできた男勝りのカウガールに主人公は惹かれていきますが、彼女にも触れられたくない過去がありました。過去を振り切るために本気で飛び出していくのは、女性のほうなんですね。著者は、カウガールの仕事をしていたこともあるそうです。

「エルクの言葉」都会から越してきた隣人の笛に呼び寄せられたエルクを見て、主人公の女性は、怒りと気恥ずかしさを覚えます。

「東へ向かうアリス」フロリダに向かう途中、トラックが故障してひまわり畑で立ち往生する兄と妹。賢くない兄を介抱して車を修理する手はずを整えた妹は、毅然として旅立ちます。2人の未来は厳しそうなのですが・・。

「あのばかな子たちを捕まえろ」焦燥感に駆られてバカなことばかりを繰り返す若者たちが嵐の海で溺れそうになります。仲間に怒りを覚えた女性は、そこから抜け出せるんじゃないかな。

デニー・ブラウン(十五歳)の知らなかったこと」両親の仕事の詳しい内容も、いじめっ子が友人になった理由も、彼女が彼に好意を持った理由も知らなかった少年ですが、周囲の人々の好意に包まれていたことを知る日が来るのでしょう。

「花の名前と女の子の名前」花と女の子の名前しか思い出せない老いた大伯母を世話していた青年が、年老いてつぶやくのは、ある踊り子の名前でした・・。

「華麗なる奇術師」天才奇術師の妹と結婚した男は、マジシャンになった娘に才能が乏しいことを残念に思っていましたが、粗暴な行為で入所した刑務所で見たのは、娘が彼のために演じてくれた世界一の手品だったのです。^^

他には「撃たれた鳥」、「トール・フォークス」、「ブロンクス中央青果市場にて」、「着地」、「最高の妻」が収録されています。

2011/8