りぼんの読書ノート

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ブルースRed(桜木紫乃)

貧民窟で育った少年が釧路の歓楽街の支配者となる『ブルース』の続編です。前作の主人公・影山博人は、多くの女性遍歴を重ねた末に、妻としたまち子の連れ子である莉菜から父親として愛されたまま生涯を終えています。本書の主人公は父親の地盤を継いだ影山莉菜。

 

母・まち子を表社会の看板として、裏社会を牛耳っていた莉菜には、ひとつの目的がありました。それは父親の血を引く優秀な青年・武博を後継者として育てあげ、官僚から代議士への道を歩ませること。「男と違って、女のワルには、できないことがない」という亡き父の言葉を胸に刻んだ莉菜は、恐るべきダークヒロインとなって目的のために邁進します。しかしそれは彼女が背う十字架をいっそう重くしていくのです。幾度もの裏切りの果てに、彼女はどのように自分の人生に区切りをつけるのでしょう。

 

まち子以外にも、前作で登場した女性たちの「その後」も描かれます。幼馴染だった影山によって貧民街から救出された後にすすきので店を持った圭。生涯「影山博の情婦」を名乗って場末の酒場で死んだ美紀。傀儡道議で武博の戸籍上の父親である松浦と運命をともにする妹の千雪。武博の生母として野心を抱く松浦の妻。もちろん本書で新たに登場する女性たちもそれぞれに魅力的、影山に潰された父の復讐を誓うあすみ、父娘2代に渡る用心棒・弥伊知の妹のシズカ、晩年の莉奈と関わる瀬戸内ギャングの李。

 

莉奈が釧路から出ることになるとは意外でしたが、そうでもしないと彼女の新しい人生は始められなかったのでしょう。北の大地に生きる強い女を描き続ける著者のノワール小説には、迫力も哀愁も詰め込まれています。

 

2022/8