りぼんの読書ノート

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ギャザリング・ブルー 青を蒐める者(ロイス・ローリー)

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前作『ギヴァー』と同じ時代の物語ですが、本書では別のコミュニティが舞台となります。ここは一握りの守護者のみが富を独占し、大勢の庶民たちは絶望的な貧困と、それが生み出す残酷な争いの中で暮らしている世界。 

 

かつて狩で父を亡くし、今度は病気で母を亡くして天涯孤独の身となってしまった、脚の不自由な少女キラは、フィールドと呼ばれる荒野に追放されようとしていました。そこでは、役に立たない者は生きていく資格を持たないのです。しかし「守護者評議会」に召喚されたキラを待っていたのは、思いもよらない運命でした。 

 

実はキラは機織りの名手であるのみならず、織物の中に未来を編みこむことができる能力の持ち主だったのです。それに気づいていた評議会は、彼女を議事堂の中に住まわせて、ある役割を与えます。そこにはキラと同年代で彫刻が得意な少年や、歌が得意な幼い少女がいて、守護者たちのための未来図を描くことが求められていました。染色を学ぶことを求められて、まだ知られていない青色を染め出す植物を求めるキラは、その過程で守護者たちの秘密を知ってしまいます。しかも亡くなったと教えられた父親は、森を抜けたかなたにある独自のコミュニティで生きているというのです。 

 

どうやらそこは、第1部『ギヴァー』の主人公ジョナスが開いたコミュニティのようなのですが、この時点では明確に記されません。彼は理想郷を開くことができたのでしょうか。キラは、父親とともにそこへ向かうことになるのでしょうか。そして彼女たちは、強いられた未来をありうべき未来へと置き換えることがのできるでしょうか。第1部と第2部の登場人物たちが出会う第3部では、本書でキラのために活躍した幼い野生児マットが意外な役割を演じることになります。 

 

2020/9