りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

メッセンジャー 緑の森の使者(ロイス・ローリー)

f:id:wakiabc:20200815145048j:plain

第2部から6年後の物語。かつての野生児マティは、魔法の指を持つ少女キラと別れ、視力を失っていたキラの父親と一緒に、新しく開かれた村で暮らしています。そこは記憶の器であったジョナスが若き指導者として拓いた、つつましいながら相互扶助の精神にあふれた村でした。 

 

しかし、そんな理想郷が不気味に変わり始めます。村を囲む深い森は村人に敵意を抱き始め、村人たちの中からは新参者の受け入れを拒む声があがり始めるのです。かつては誰もが、それまで住んでいたコミュニティの無慈悲な統治、過酷な刑罰、絶望的な貧困、偽りの快適さから逃れて、村にたどりついた新参者であったはずなのに。 

 

自由に森に出入りして旅ができる唯一の人物であるマティは、村が閉鎖される前にキラを迎え入れようとして、森に入ります。しかしその彼をもってしても、敵意を剥き出しにした森を抜ける旅は命がけの冒険でした。自分が生まれ育ったコミュニティの変革を成し遂げていたキラも、村に向かう決意をしていたのですが・・。 

 

ともに「彼方を見る力」を持つジョナスとキラは、出会うことができるのでしょうか。そして村と森の不気味な変化を止めることができるのでしょうか。実はマティが覚醒させた真の能力が「メッセンジャー(使者)」ではなく「ヒーラー(癒す者)」であったことが大きな役割を果たすのですが、これ以上書いてはネタバレですね。 

 

読んでいる時は気づかなかったのですが、この4部作はヤングアダルトに分類されているようです。もちろん大人にとっても読み応えのある作品ですが、社会の在り方や人間の生き方について「思索と議論を呼びさます」という意味で、思春期を迎えた若い人たちに薦められるシリーズです。 

 

2020/9