りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ジュリエット(アン・フォーティア)

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シエナのカンポ広場に面するプブリコ宮殿の内部は市民美術館。そこで、アンブロージョ・ロレンツエッティの「善政の効果」を見たことは覚えています。でも、その絵画に秘められた意味があったとは・・。シェークスピアの「ロミオとジュリエット」はヴェローナを舞台としていますが、その原型となった物語はシエナで生まれていたんですね。そしてそこには、敵対する2つの家の物語ではなく、第3の家が関係していたというのです。

幼い頃に母を亡くしてイタリアを離れ、アメリカの大伯母のもとで育てられたジュリーは、大伯母の遺言で、自分の本名がジュリエッタ・トロメイであって、あのジュリエットの直系の子孫だと知らされます。母が隠したという秘宝を探すために、シエナに飛んだジュリーが出会ったのは、彼女との再会を喜ぶトロメイ家の一族だけでなく、中世から敵対関係にあったサレンベーニ家の末裔。さらにもうひとり、「運命の人」がいたのです。その人の名はもちろん・・。^^

本書は14世紀の「ロミジュリ」の悲劇を見届けた画家アンブロージョが遺した手稿をたどりながら、現代まで引き継がれた呪いに決着をつけるヒロインの活躍を描きます。でもこのヒロイン、双子の妹ジャニス(本名ジアノッツァ・トロメイ)に嫉妬し、「運命の人」の正体を見破れずにウジウジしたり、全然それっぽくないんです。それにこの種の「過去と現代のダブル・ストーリー」では、「過去の物語」の方が
ずっとミステリアスで面白いというのも定番ですしね。

世界一美しいと言われるカンポ広場(そのとおり!)で繰り広げられるパリオと、「ロミジュリの悲劇」の直後にシエナを襲った悲惨なペスト禍のイメージが、この作品を救ったように思えましたが・・。

2011/8