りぼんの読書ノート

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ウエスト・サイド・ストーリー(アーヴィング・シュルマン)

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ロミオとジュリエット』の翻案でありながら、1950年代のニューヨークの状況を反映することで、時代を超える人気を獲得した作品になりました。1957年にブロードウェイで初演された後に、1961年と2021年の2度に渡って映画化されています。ただしそのノヴェライズである本書では、ミュージカル音楽を楽しめないのは仕方のないところ。

 

物語はシンプルです。再開発の波に呑まれつつあるニューヨークのアッパーウェストサイドで対立する少年ストリートギャングたち。とりわけプアホワイトのグループ「ジェッツ」とプエルトリコ系グループ「シャークス」は天敵どうし。しかしジェッツの元リーダーで真面目に働こうとしているトニーが、ダンスパーティで出会ったマリアと恋に落ちてしまったことから悲劇が始まります。マリアは、シャークスのリーダー・ベルナルドの妹だったのでした。

 

『ロミジュリ』はたった5日間の間に起こった悲劇ですが、こちらはもっと濃密です。トニーとマリアが出会ってからラストまではわずか2日間。その間に、少年少女の純愛や、プアホワイトの惨めな暮らしや、移民たちが抱くアメリカへの憧れや絶望や、少年たちの更生を願う大人たちの思いなどを描き切ったわけですから、やはり秀逸な作品と言うべきなのでしょう。

 

スピルバーグ監督によるリメイク映画を見てこようと思います。本書を読んでいる間ずっと、「Prologue」のリズムや、マリアらが歌う名曲「Tonight」が脳内で流れていましたので。

 

2022/4