りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ(遥洋子)

イメージ 1

誰かがこの本について、怖い言葉が3つも入っていると言いました。「東大」と「ケンカ」と、もうひとつはもちろん「上野千鶴子」。フェミニズムの闘士で、日本で一番怖いといわれる女性・・・。

なんと、タレントさんが、東大の上野千鶴子ゼミで3年間学ぶ。冗談でも洒落でもない。学生たちに混じって本気で勉強する。「タレントさんの学問体験記」ではなく、「学問を志す初学者の苦悩」の本です。

言葉がわからない。議論の仕方がわからない。発言を迫られて立ち往生し涙を流す。焦り、無力感、絶望、コンプレックスに悩む日々。プリントを配られたら、まず理解できる日本語を探し、学生たちに「今、私、なに勉強してんの?」と聞かざるをえないレベルからはじまって、学ぶことの楽しさと苦しさがわかりだしてくる。

頭はいいけれど何をしたらいいかわかっていない学生たちの問題点を理解し、「自分の役割は広めること」と、学ぶ目的をはっきりさせてしまう。そしてもちろん、上野教授の「ケンカのコツ」も身につけちゃう。彼女が学んだものは「議論の構成と枠組み」すなわち「ケンカ」なのですから。

あとがきで彼女は言っています。「社会学が私にくれたもの、それは『言葉の世界』でした。言葉の持つ『扱い要注意性』に気付いたら、今までよく生きてこれたとゾッとした」と。並みの小説よりおもしろい。そして、彼女と一緒に教室で緊張している自分を発見するのです。

(クラブの「しりとり」に)