りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

麻雀放浪記 1青春編(阿佐田哲也)

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麻雀のことはよくわからないのですが、それでもこの本の魅力はわかります。日本の小説の中でピカイチのビカレスク・ロマンです。

終戦直後、上野不忍池付近のドヤ街でのサイコロ賭博を皮切りにして、ギャンブルにのめりこんでいく17歳の「坊や哲」が、それぞれ戦後の混乱期を腕と力で生き抜く魅力的で迫力あるアウトローたちとの出会いと闘いを通じて、成長していく物語。一種のビルドゥング・ストーリーでありながら、ピリピリした時代の空気を感じさせ、しかも博打打ちの悲哀までもを描ききった奇跡的な作品。

時流に乗ったクールで若い天才ながら、時にヒートアップもする「ドサ健」。「坊や哲」の教師であり最強のライバルともなる、古いタイプの賭博師の「出目徳」。吉原の口入れ屋を本業としながら、やはり麻雀にのめりこんでいく「女衒の達」。

さまざまなエピソードや、脇役たちの栄枯盛衰の末の「決勝戦」ともいえる青天井麻雀にたどり着いたのは、「坊や哲」を含めたこの4人。賭けられているものは現金だけでなく、家の権利証や、さらにはドサ健の彼女まで。でも最大の賭け物は、ギャンブラーとしての意地なのでしょう。壮絶なエンディングが読者を待っています。

前に読んだときには、「大四喜十枚爆弾」や「2の2の天和」や「つばめ返し」といったイカサマの大技をよく理解できませんでしたが、今回は理解できました。でもこんな技をわからなくてもおもしろい。学生時代にこの本を読んで、大きくなったらギャンブラーになりたいと思ったほどです(笑)。

そういえば、映画も見たのでした。結構すごい配役です。「坊や哲」真田広之、「ドサ健」鹿賀丈史、「出目徳」高品格、「女衒の達」加藤健一、「クラブのママ」加賀まりこ、「ドサ健の彼女・まゆみ」大竹しのぶ

図書館で見かけて、懐かしく思って再読してしまいました。このシリーズ、「戦後」が終わっていく中で古い世代となっていく「坊や哲」らが苦しみ悶えながら闘い続ける「続巻」が3冊あるのですが、再読はこれだけで十分。ギャンブラーにはなれませんでしたもので・・^^;

2009/2