エルロイの「LA4部作」の第1作。ちなみに第3作は「LAコンフィデンシャル」で、ラッセル・クロウ、ケビン・スペイシー、キム・ベイジンガーといった豪華キャストで映画化されています。
「元ボクサーの警官:バッキー・ブライチャート」が、黒髪で黒服の美女「ブラック・ダリア」惨殺事件の捜査にあたります。犠牲者は、ハリウッドにあこがれて田舎から出てきたものの役にありつけず、お定まりの転落コースをたどっていた女性。
バッキーがこの事件の捜査にあたるやいなや、死者が続出。相棒リーの彼女の元カレだったギャング、巡査部長のフリッツ、さらには、行方不明になっていた相棒のリーも殺されていたり、最大の容疑者も捜査中に射殺されてしまったりして、事件は二転三転、容疑者もゴロゴロ。
バッキーは、容疑者の娘マデリンに誘惑されたと思ったら、マデリンが「ブラック・ダリア」と同じ扮装で現れたりして、ますますワケのわからない世界に突入。もちろん、最後には真犯人が突き止められるのですが、そこに至るまでの過程で登場する悪事を働く警官や、腐敗しきった警察が、エルロイ・ノワールの読ませどころ。
すさまじい暴力と愛憎と性描写に満ちている、この作品。それでも意外なことに読後感は悪くない。本書を、やはり惨殺された母に捧げた作者・エルロイの真摯な態度が伝わってくるからでしょうか。
(クラブの「しりとり」に)