りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

フォー・ディア・ライフ(柴田よしき)

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新宿2丁目で無許可保育園を営む探偵っていうだけで興味湧くなぁ。東京に住んでいる者にとっても、「新宿の裏社会」は謎めいているのです。

「裏社会の街にも人は住んでいて、子供もいる」。その通りですよね。でも、その子供たちの親は、不法就労の外国人女性だったり、夜の職業についていたり、色々とワケアリだったりします。だから、さまざまな形で顕れる「親子の関係」について、元マル暴刑事だけど心優しい、主人公の花咲慎一郎は敏感なのです。

彼が扱う事件のほうも、彼を父親と信じ込む高校中退生の世話とか、玉の輿に乗ったはずの前科持ち女性の家出娘の捜索とか、徹底して「親子関係」がテーマ。その上で、関係なさそうな色んな事件が繋がってきて真相が明らかになってくるあたりは、柴田さん、上手だな。

しかも、「こんな設定なんだから、もっと保育園そのものにからむ事件を書いてくれればいいのに」と思う読者(私のことです)の気持ちにも、ラストでちゃんと応えてくれるあたりは、見事としか言いようがありません。ところで、一連の事件は「パソコン通信」で繋がっていました。1998年に出版された本ですが、当時はまだ、ネット社会は一般的になっていなかったんですね。この数年の時代の流れの速さを感じます。

このシリーズは好評で、すでに第3作まで出ているそうです。続きも読みたくなったな。さっそく第2作を借りてきました。

2005/8