りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ゲノムの方舟(佐々木敏)

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ガラがこの作者(別の本ですが)を紹介していたので、読んでみました。

世界の人口は64億人だそうです。20年で30%も増加。途上国が多産少死となり、人口大国の中国・インドが成長軌道に乗り、資源、環境はもとより、水、食料までも問題になりつつある現在、人口爆発は、すでに人類最大の課題になっているのでしょう。

この作者の処女作のせいか展開がゴツゴツしていて、しかも欲張って前半に色んな伏線を詰め込みすぎ。さらに、主人公の日本人遺伝子学者・井坂のキャラがちょっと弱い。でも、人類の将来を憂える勢力がヒトゲノムというツールを得て、特定の人種にしかヒットしないウィルスを開発できたときに、こういう陰謀を巡らせる可能性ってあるかも・・と思わせる内容には引き込まれます。

WHO総会へのテロリスト襲撃、アメリカ初の黒人大統領の誕生、コロラド州での奇妙な日本ブーム、架空のテロ支援国家への攻撃。これが全部、一連の陰謀の一環なんだから、手が込んでます。

あまりに手が込みすぎて、かえってリアリティを失ったかもしれませんね。陰謀に対抗する勢力が、ゲバラの隠し子というセンスは好きですけど。もうひとつ注文つけると、小説的にはエピローグは蛇足かな。でも、このエピローグこそが作者が書きたかったことなのでしょう。これこそが、人口爆発問題に対する「作者の処方箋」なのでしょうから。

2005/8