りぼんの読書ノート

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魅せられたる魂(ロマン・ロラン)

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ジャン・クリストフ」と並ぶ、ロマン・ロランの不朽の名作。第一次世界大戦前後のパリを舞台にして、ブルジョアジーの没落とプロレタリアートの台頭の時代を生きた女性を描く、感動の大河ドラマです。

父の死と破産の結果、生活のために働く未婚の母・アンネット。前半はアンネットが労働を通じてブルジョワ的偽善から立ち上がる姿と、母の愛情に気付かないバカ息子・マルクとの激しい母子愛が描かれます。亡命ロシア人の娘アーシャと結婚したマルクが母の思想を超えて、共産主義者として半ファシズム活動に走る様子を描くのが後半。

マルクは、イタリアでファシズムの犠牲になってしまいます。アンネットが、息子を失った悲しみのどん底から立ち上がる場面がクライマックス。アネーシャには「マルクができなかったことのために戦いに行きなさい。あたしの娘!」と呼びかけ、自らには「あたしはマルクを生みましたが、今度は彼があたしを生むのです」と、マルクの思想を継ぐことを宣言するのです。

学生時代にこの本を読んで何度も泣きました。ところが当時は「ロマン・ロラン的な安易なヒューマニズムは克服されなければならない」という論調があって、一部の友人からは「お嬢さん文学趣味」などと言われたんですね。

どのあたりが安易なヒューマニズムなのか、いまだにわかりません。「こんなに理想的な人生をおくる人は滅多にいない」のはわかるし、だからこそドラマチックな小説になるとは思うのですが・・・。

(クラブの「しりとり」に)