りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

密謀(藤沢周平)

「時代小説」を得意としている藤沢さんですが、この本は「歴史小説」。歴史上の人物を主人公として歴史上の出来事を描いているのですが、テイストは一緒ですね。「義」を曲げないけれど、押し付けがましくはない、魅力ある人物が登場するのですから。 本書の…

シャドウ・オブ・ヘゲモン(オースン・スコット・カード)

『エンダーのゲーム』にはじまる4部作は『エンダーの子どもたち』で完結しましたが、それとは別に、エンダーの副官だった天才少年ビーンを主人公として開始されたのが「シャドウシリーズ」。本書は『エンダーズ・シャドウ』に続く2作め。「エンダーシリー…

蒸気駆動の少年(ジョン・スラディック)

「鬼才スラディック」と言われても全然ピンとこなかったのですが、読んでみて納得。奇想天外な発想が紡ぎだす物語は、もはやSFでも、ミステリーでも、オカルトでもなく、むしろ「悪夢」に近いかもしれません。23編の全部を簡単に紹介してしまいます。も…

相棒(五十嵐貴久)

大政奉還を直前に控えた京の都で発生した、将軍・徳川慶喜の暗殺未遂事件。前代未聞の大事件であり、幕府は総力をあげて犯人捜索をしますが、捜査は難航。大政奉還の反対者は佐幕派にも討幕派にも多数いるため、対象を絞り切れないのです。 急遽呼び出された…

私自身の見えない徴(エイミー・ベンダー)

評判の良かった『燃えるスカートの少女』は未読ですが、まず長編を読んでみました。自分の世界に閉じこもっていた20歳の女性が心を開き始めるという成長物語であり、本来なら読後感は爽やかであってもいいのですが、彼女の場合にはそうはなりません。 10…

『マルティン・ベック』シリーズ(ペール・ヴァールー、マイ・シューヴァル)

スウェーデンの元新聞記者であったペール・ヴァールーと、妻のマイ・シューヴァルが生み出した「マルティン・ベックシリーズ」は、1965年から10年間、毎年1冊ずつ執筆された警察小説です。 各巻の事件の背景には当時のスウェーデン社会が抱える問題が…

平成大家族(中島京子)

キマジメな文章の中島さんが、大家族が織り成すホームドラマを書いたらどうなるのでしょう。「大家族」といっても、一昔前の「家長制大家族」とは様相が異なります。皆それぞれに問題を抱えている個人なのですが、それでも「家族」であることは「絆」であり…

リメイク(コニー・ウィリス)

デジタル化された俳優を使ったリメイクばかりが製作される近未来のハリウッド。マリリン・モンロー主演の「プリティ・ウーマン」とか、不滅の肉体を誇るデジタル版シュワルツネッガーによる「ターミネーター9」とか、ハッピーエンド・バージョンの「カサブ…

黄金の王 白銀の王(沢村凛)

登場人物や地名に散りばめられた難しい漢字に辟易してしまいましたが、それにめげずに読み通す価値のある本です。べるさんの絶賛がなければ、読まなかった本ですね、たぶん。 百年以上も閉ざされた島国の支配をかけて骨肉の戦いを繰り広げてきた2つの一族に…

哀れなるものたち(アラスター・グレイ)

作者が偶然入手した、19世紀後半の医師の自伝には驚くべき物語が記されていました。厖大な資料を検証した後、この書に記されたことすべてが真実であるとの確信を得た作者は、本書を翻刻して、事の真相を世に問うことを決意する・・というのが一番外側にあ…

異邦人(パトリシア・コーンウェル)

「検屍官ケイ・スカーペッタ」シリーズの第15作は、前作『神の手』と同様に、シリーズ当初の雰囲気に先祖がえりしたような作品でした。ケイに悪意を持って彼女を貶め、彼女の人間関係を破壊しようとする人間の存在。被害者の遺体から採取された遺留品の科…

イブ・グリーン(スーザン・フレッチャー)

自分のことを「イブ」と呼ぶことを選択したエヴェンジェリンは、いま29歳。年の離れた男性の子をみごもり、未婚の母となる決意を固めたところ。でも彼女に悲壮感はありません。むしろ、子どもの誕生を心待ちにしているのです。なぜなら、自分が8歳の時に…

逆転世界(クリストファー・プリースト)

「地球市」と呼ばれる要塞都市は、毎年36.5マイルを北に移動する宿命のもとにあり、都市ギルドの全ての労力は、都市を前進させるために費やされています。常に移動している「最適点」に決して遅れをとらないよう、進行方向にレールを敷設して、川には橋梁…

甘い薬害(ジョン・グリシャム)

「超訳」の本を読んだのは『ゲームの達人(シドニー・シェルダン)』に続いて2冊目(笑)。ストーリーの展開だけを追っても楽しめるようなジェットコースター・ストーリーであれば、「超訳」でもかまわないのかもしれません。本書もそんな一冊。 せっかく弁…

サイバーパンクの創始者:ウィリアム・ギブスン

1984年といったら、まだWWW(World Wide Web)もWindowsもなく、ようやく軍事用にTCP/IPが使われ始めた頃。そんな時代に発表された『ニューロマンサー』は、サイバーパンクSFという新しいジャンルを生み出したのみならず、「ネット社会」とい…

まどろむ夜のUFO(角田光代)

30代から40代の女性の感情の揺れを代弁してくれる作家の代表のような角田さんですが、10年以上前のデビュー当時は、「ニート小説」とか「フリーター小説」と分類されるような作品を書いていたんですね。1996年の野間文芸新人賞受賞作です。 正社員…

ココ・マッカリーナの机(中島京子)

「ココ・マッカリーナ」なんてラテン系のようですが、実は中島京子さんのこと。日本文化を紹介する教師交換プログラムの教育実習生としてアメリカに渡った際に、日本語の名前をうまく発音できない子供たちから、「キョウコ→ココ」、「ナカジマ→マカジナ→マッ…

ウェイクフィールド/ウェイクフィールドの妻(N・ホーソーン/E・ベルティ)

しろねこさんが紹介していたホーソーンの『ウェイクフィールド』を探していたら、彼の妻の立場からのアンサー小説とセットになっている単行本を見つけました。 『ウェイクフィールド』は不思議な本です。「ちょっと出かけてくる」と妻に言い残して家を出て、…

アリアドニの遁走曲(コニー・ウィリス&シンシア・フェリス)

傑作SF『犬は勘定に入れません』や『航路』の作者であるコニー・ウィリスさんの、若き日の作品です。設定はSFですが、内容は17歳の少女アリアドニの冒険物語。今ならYAに分類されるのかもしれません。 おそらく今から100年くらい後。北アメリカは…

神は沈黙せず(山本弘)

話題になった『アイの物語』の原点ともいえる作品ですが、「とんでも本」などを品評する「と学会」の会長らしく、古今東西の超常現象に関する知識を総動員して、「神」の本質に迫ろうとする、意欲的な内容です。 そもそもなぜ、UFOや超能力やポルターガイ…

エンダーの子どもたち(オースン・スコット・カード)

前作『ゼノサイド』は中途半端なところで終わっていました。エンダーらの住む惑星ルジタニアに蔓延している致死性ウィルスのデスコラーダは、毒性を取り除かれましたし、汎宇宙的なネットワークに潜む知性体ジェインによって、宇宙空間の瞬間移動も可能とな…

ウィキッド(グレゴリー・マグワイア)

『オズの魔法使い』には、4人の魔法使いが登場します。「東の悪い魔女」はドロシーの家につぶされ、「西の悪い魔女」はドロシーに水をかけられ溶けてしまい、「エメラルドの都を治める大魔法使い」は単なるペテン師にすぎず、最後に「南の良い魔女」がドロ…

キューバ・リブレ(エルモア・レナード)

1898年のキューバ。ニューオリンズ出身のカウボーイであるタイラーが、キューバまではるばる馬を売りにきたちょうどその時、アメリカの戦艦がハバナ港で爆沈され、スペインとの戦争がはじまろうとしていました。 タイラーの行く手に現れるのは、混乱した…

大冒険時代(マーク・ジェンキンズ編)

世界は近くなりました。地球の裏側にだって24時間もかからずに行けちゃうし、「秘境」と言われる所にもTV局のクルーがどんどん入り込んで、クイズ番組にされてしまう時代。でもそんなのは、せいぜいこの数十年間に起きた変化。わずか50年前には、世界…