りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

黄金の王 白銀の王(沢村凛)

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登場人物や地名に散りばめられた難しい漢字に辟易してしまいましたが、それにめげずに読み通す価値のある本です。べるさんの絶賛がなければ、読まなかった本ですね、たぶん。

百年以上も閉ざされた島国の支配をかけて骨肉の戦いを繰り広げてきた2つの一族には、互いに相手に対する復讐心が魂の奥深いところまで染み付いていました。そんなしがらみを断ち切って平和な世を作りたいと願った2人の王がたどる苦難の物語。

数年前のクーデター以来、政権を担っている鳳穐一族の若き王・穭(ひづち)は、捕囚のまま育てられていた旺廈一族の直系後継者・薫衣(くのえ)に驚くべき提案をするのです。鳳穐と旺廈をひとつにするため、穭(ひづち)の同母妹である稲積(にお)と政略結婚をしないか・・と。

提案を受諾した薫衣(くのえ)自身、両親の仇への復讐心を支えに生きてきた者ですから、ましてや両者の真意を知らない周囲には、混乱と非難が渦巻きます。薫衣(くのえ)に対しては、信を曲げて保身を図った裏切り者であり蔑むべき者であると。穭(ひづち)に対しては、支配者として政道を誤った行いであると。

2人の心だって、時に揺れ動きます。先見性あるヴィジョンを打ち出し難しい政局の舵取りをしている穭(ひづち)にしても、生まれながらにして王者たる人格を持つ薫衣(くのえ)に対する嫉妬心を抱くこともある。薫衣(くのえ)にしても、生命をかけて彼に再起を迫る一族の者を見殺しにせざるを得ない苦しみを味わうことになるのです。

この物語は、単純なハッピーエンドでは終わりません。積年の恨みが解消するには、数世代という長い年月を必要とするのですから。でも、2人とも幸せだったはずですね。深いところまで互いを信じることができ、将来に希望を託すことができたのですから・・。

2008/3