りぼんの読書ノート

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リメイク(コニー・ウィリス)

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デジタル化された俳優を使ったリメイクばかりが製作される近未来のハリウッド。マリリン・モンロー主演の「プリティ・ウーマン」とか、不滅の肉体を誇るデジタル版シュワルツネッガーによる「ターミネーター9」とか、ハッピーエンド・バージョンの「カサブランカ」なんかが製作されたりしてるんですね。

誰よりも映画を愛しながらも、フィルムを修正したり改ざんしたりする仕事をしている主人公トムが出会ったのは、往年のミュージカル映画に憧れ、「生身で」映画に出演して踊りたいという女子大生のアリス。でも彼女の願いは、今のハリウッドでは叶えられません。彼女に惹かれながらもアリスと別れたトムでしたが、ある日、昔のミュージカル映画の中でバックダンサーとして踊っているアリスを見つけます。

それは、権利ビジネス化している映画会社が門外不出としているオリジナルソースが置き換えられているという、リメイクでもCGでも修正でもないものだったのですが、どうしてこんなことが可能だったのでしょう。一部ネタバレしてしまうと、これは、そろそろ発明されるとの噂があるタイムマシンを使ったものではありません。アリスの一途な思いが結晶化されたかのような、もっと綺麗で、スマートで、思いがけない現象が起こっていたのです。まさに奇跡。^^

エンディングではアリスが、「踊るニュウ・ヨーク」で憧れのフレッド・アステアとタップを踊ってしまいます(ジーン・ケリーは彼女の好みじゃないんですね)。あふれんばかりの名画のタイトルと名セリフとに彩られた、楽しい作品でした。単なる名画礼賛ではなく、映画業界に対する批判も込められていますし。

ところで本書の中で「最後にミュージカル映画が作られたのは1996年だった」とありますが、これは「エビータ」のことのようです。嬉しいことに作者の「予言」は外れてくれました。その後「シカゴ」も「オペラ座の怪人」も映画化されましたもんね。

2008/3