りぼんの読書ノート

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平成大家族(中島京子)

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キマジメな文章の中島さんが、大家族が織り成すホームドラマを書いたらどうなるのでしょう。「大家族」といっても、一昔前の「家長制大家族」とは様相が異なります。皆それぞれに問題を抱えている個人なのですが、それでも「家族」であることは「絆」であり、いざという時には同居せざるをえない相手なんですね。

72歳の元歯科医・緋田龍太郎と妻の春子、妻の母のタケと、ひきこもりの長男克郎までが、オリジナルメンバー。そこに入り込んできたのは、事業に失敗した長女逸子の一家3人に、離婚した妊婦の次女友恵で、赤ちゃんが生まれて合計8人。それぞれに、引きこもり、登校拒否、離婚、自己破産、老人介護などの問題があるのですが、家長である龍太郎は、むしろオロオロするばかり。

でも、最後は「落ち着くところに落ち着く」のが、ホームドラマたるゆえんです。でも、本書におけるハッピーエンドは、「大家族状態の終焉」でもあります。不本意ながら家に戻ってきた者たちが望むことは、新しい仕事や結婚という形で、また家を出て行くことなのでしょうから。

実は、こういう小説は、あまり好きではありません。中島さんが書かなくても良かったのでは?

2008/3