りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

相棒(五十嵐貴久)

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大政奉還を直前に控えた京の都で発生した、将軍・徳川慶喜の暗殺未遂事件。前代未聞の大事件であり、幕府は総力をあげて犯人捜索をしますが、捜査は難航。大政奉還の反対者は佐幕派にも討幕派にも多数いるため、対象を絞り切れないのです。

急遽呼び出されたのが、大政奉還のシナリオを書いた「坂本龍馬」と、彼の宿敵である新撰組の「土方歳三」。与えられた時間は、わずか2日間。これ以上、捜査が遅れると、大政奉還の方針自体が白紙に戻ってしまい、日本国中で戦乱が起きてしまいかねない!

これは、映画「48時間」へのオマージュ小説ですね。白人刑事(ニック・ノルティ)と、黒人犯罪者(エディ・マーフィ)が、嫌々ながらもコンビを組まされて大事件の捜査にあたる映画です。互いに自分の属する世界の情報を相手に披露して事件を解決に持ち込み、最後には不思議な友情も生まれちゃうんのです。

本書では、龍馬をメインに薩摩の西郷・長州の桂・朝廷の岩倉らの聞き込みを行い、土方をメインに会津藩や幕閣、さらには新撰組と分かれた高台寺党の調査を実施。倒幕派の拠点に乗り込むときに、土方が「付き人の小物」にされちゃう「愉快さ」や、龍馬の危機を新撰組の沖田が救ったりする展開には「意外性」も楽しめます。

幕末のオールキャストが登場してしまう豪華さですが、もちろん犯人はわかります。そして、この事件が「政治的決着」をつけられて闇に葬られてしまった理由も・・。でも本書のメインは、当初は「横糸」と思われた、龍馬と土方の友情物語でした。作者の描いた龍馬暗殺事件の真相が、一番「意外」だったかもしれません。

2008/3