りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

イブ・グリーン(スーザン・フレッチャー)

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自分のことを「イブ」と呼ぶことを選択したエヴェンジェリンは、いま29歳。年の離れた男性の子をみごもり、未婚の母となる決意を固めたところ。でも彼女に悲壮感はありません。むしろ、子どもの誕生を心待ちにしているのです。なぜなら、自分が8歳の時に急死した母の過去を知ったことは、イブにとって決して暗いできごとではなかったから・・。

村一番の美女として評判だった母が、流れ者のアイルランド人男性と恋に落ちたこと。彼が村を去った後、イブを身ごもったまま都会に出て行った母が、8年間、ひとりでイブを育て上げたこと。

母の死後ウェールズの田舎の村に住む祖父母に引き取られ、保守的な村人たちの間で自分と母がどう言われているのかを知った時、イブは後ろめたさなど感じませんでした。母が遺した日記には、男性と恋に落ちた若い女性の喜びが綴られていたから・・。

母の育った村での生活は、8歳のイブに影響を与えます。母を慕っていた男性の存在。可愛かったロージィの失踪。自分を嫌う男に対する密告。緑の眼の男に乱暴されそうになったこと。母を愛していたビリーが住む納屋への放火。そして、12歳年上のダニエルへの幼い恋心・・。

そして29歳になったイブは、未婚の母となろうとしています。まだ20代の作者による、一編の詩のような小説です。主人公になりきって、はじめての翻訳を仕上げたという吉田菜津子さんの文章も初々しくて好感が持てます。

2008/3