りぼんの読書ノート

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キューバ・リブレ(エルモア・レナード)

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1898年のキューバニューオリンズ出身のカウボーイであるタイラーが、キューバまではるばる馬を売りにきたちょうどその時、アメリカの戦艦がハバナ港で爆沈され、スペインとの戦争がはじまろうとしていました。

タイラーの行く手に現れるのは、混乱したキューバの縮図ともいうべき、多様な人々。お坊ちゃんで不良のスペイン軽騎兵テオ。馬の注文主のアメリカ人大農園主ブドロー。彼の情婦ながら独立精神旺盛なアメリア。彼の家僕ながら実は独立運動家のフェンテス。タイラーにスパイの容疑をかけて付け狙う治安警察の幹部。アメリカ新聞の特派員記者・・。

アメリカとスペインの戦いが始まるときに、物語はクライマックスに向かっていきます。アメリアがキューバ独立派と仕組んだ狂言誘拐の身代金をめぐる、命を賭けた争奪戦にタイラーも巻き込まれてしまうのですが、果たして生き残って大金を手にするのはいったい誰なのか。

でも、そんなストーリーよりも、スペインの支配が終わろうとしている時代のキューバの、ある意味で西部劇の無法地帯とも共通るすかのような乱雑な雰囲気を楽しめる本です。『キューバ・リブレ』とは「自由なるキューバ」の意味ですが、米西戦争の結果は、支配者がスペインからアメリカに変わっただけでした。キューバの独立は60年後のカストロ革命まで達成されないのですが、それが民衆に平和と繁栄をもたらしたかというと、それはまた別のお話ですね。

2008/3