りぼんの読書ノート

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まどろむ夜のUFO(角田光代)

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30代から40代の女性の感情の揺れを代弁してくれる作家の代表のような角田さんですが、10年以上前のデビュー当時は、「ニート小説」とか「フリーター小説」と分類されるような作品を書いていたんですね。1996年の野間文芸新人賞受賞作です。

正社員ではないというので、おそらくハケンで働いている女性が主人公。几帳面な性格の恋人・サダカくんと5日おきにデートする規則正しい生活をおくっている所に、かつてUFOを信じていた高校生の弟タカシが転がり込んできて、さらに電車の中でタカシと知り合った魂の前世を信じるという恭一が現れたことによって、彼女の生活も浮遊し始めます。

タカシと恭一のちょっと変な「穏やかに狂っている」友人たちの集会は、モラトリアム世代のオンパレードという感じで、もはやそこには青臭い議論すらなく、現実逃避しか見出せない。そんな世界に不思議な魅力を感じてしまう主人公には、アレッという感じ。その世界からの「出口」が見えそうになるエンディングは、救いですが・・。

いつも誰かと住んできたのに、同居人について知らずにいた女性が同居人の失踪によって現実感を失っていく「もう一つの扉」と、いつも居場所を求めていた叔母と少女との秘密の触れ合いの記憶を描いた「ギャングの夜」が、併録されています。

2008/3