りぼんの読書ノート

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シャドウ・オブ・ヘゲモン(オースン・スコット・カード)

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エンダーのゲームにはじまる4部作はエンダーの子どもたちで完結しましたが、それとは別に、エンダーの副官だった天才少年ビーンを主人公として開始されたのが「シャドウシリーズ」。本書はエンダーズ・シャドウに続く2作め。「エンダーシリーズ」が、異星人バガーに対する勝利から一気に3000年もジャンプしてしまったのと対照的に、こちらでは「直後」の地球が舞台です。

もともと『ゲーム』は冷戦時代に書かれた本でした。異星人の脅威が去った直後、一時的に団結していた地球は冷戦に逆戻りしてしまうのです。バトルスクールの子どもたちは、故郷に戻って普通の幸福な生活を送れるはずだったのに、世界は「戦争の天才たち」を放っておいてくれません。

そんな中で、エンダーの直接の部下だった最優秀の10人が一気に誘拐されるという事件が起こります。ただひとり、誘拐ではなくて暗殺を仕掛けられたのがビーン。ある大国を動かした仕掛け人は、異常な危険人物としてバトルスクールから放逐されていた、かつてビーンの仇敵であったアシル(ギリシャ読みはアキレス!)。

この時代にはもうひとり、忘れてはいけない人物がいます。「若きヘゲモン(支配者)」として地球に平和をもたらしたとされる、エンダーの兄ピーター。このシリーズは、ビーンを主人公としてピーターの時代を描くことになるんですね。アシルが仕掛ける世界再編の構図は、まるで「ウォーゲーム」のようであり、結局のところ、この少年たちは「ゲームの天才」だったんだなとの感をあらためて強くしました。

3人目の視点として登場する、ビーンからは不器用な、アシルからは歪んだ思いを寄せられる少女ぺトラ(やはりエンダーの部下だった唯一の女性隊員)を含め、この作者は、少年少女のこまっしゃくれた会話を描くのが得意だということも思い出しました。とはいえ、圧倒的不利な立場からヘゲモンとなって地球を平和に導くであろう、ピーターとビーンの活躍は楽しみです。続編も出ていますので、それも読むつもり。

2008/3