りぼんの読書ノート

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男ともだち(千早茜)

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29歳。京都在住。仕事に追われているイラストレーターの神名葵は、恋人・彰人と同棲中ながら、関係は冷えています。勤務医で妻帯者の遊び人・真司を愛人としていますが、人間関係にも仕事にも満たされていません。

そんな葵のところに、大学生のころからの「男ともだち」であるハセオから、7年ぶりに電話がかかってきます。1度も男女の関係になったことはないし、互いに付き合っている異性があることを公言する関係ですが、なぜか頼れる存在。そんなハセオと再会した葵の周囲で、いびつに固まっていた人間関係も仕事もほぐれていきます。

年齢や拠点から、葵は著者の分身であるように思えますが、むしろ著者の性格に近いのはハセオのほうだそうです。かなり「男らしくカッコいい」女性なのでしょうか。本書に描かれた「男女のともだち関係」について否定したり、むしろ嫌悪感を覚えるというようなレビューも見かけますが、私は「これもアリ」ではないかと思います。少なくとも、女性の側からは「アリ」なのでしょう。

ただし、作品が「小説として面白いかどうか」というと、それは別の問題です。恋人とも愛人ともきっぱり別れるまでは良かったのですが、仕事の話や、対照的ながらどこか似通った女性の友人・美穂との関係を絡めたあたりが、妙にリアリティなし。「女性視点のファンタジー」と言ってしまえば、それまでのことなのですけど。

2015/4