りぼんの読書ノート

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ヒトリシズカ(誉田哲也)

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母親に暴力を振るう男を排除した8歳の少女。妹を弄んで自殺に追い込んだ男に対する兄の復讐劇を手助けした13歳の少女。恋人をストーカーから守れなかった男に殺人を教唆した15歳の少女。自分の死を偽装して暴力団幹部の愛人となった15歳の少女。そして暴力団幹部の家で銃撃戦が起こった夜、その少女・伊藤静加は腹違いの妹とともに姿を消してしまいます。

 

唯一彼女に救いの手を差し伸べた警官の義父に対して、「あたしは暴力を否定も肯定もしない。ただ利用はする」と言い放って家を出た静加。彼女が関わったとされる5件の事件から見えてくるものは、ある意味痛快ではあるものの、深い闇でしかありません。しかし17年後の最終章では、さらなる驚きが待っていました。身分を偽って生きてきた女性の正体が明らかになった時、本書のテーマは単なるハードボイルドではなかったことを思い知らされるのです。

 

著者の作品をはじめて読みましたが、タフな女性を描いた作品が多いようです。ただし本書の読後感は悪かった。陰湿な日本社会においては、復讐劇も再生のドラマも陰湿なものとならざるを得ないのでしょうか。

 

2021/9