りぼんの読書ノート

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ライアンの代価(トム・クランシー)

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昨年亡くなった著者の作品には、「レーガン・ブッシュ時代の共和党」寄りの政治信条が色濃く出ているのですが、初期の「ジャック・ライアン・シリーズ」が面白いのも事実です。

本書は、大統領を辞したジャック・ライアンが、民主党政権下で停滞した対テロ活動を実行するために設立した民間秘密組織「ザ・キャンパス」シリーズの作品です。これまでのライアン・シリーズで活躍した、クラークやシェべスらに加え、ジャック・ライアン・ジュニアも工作員になっているんですね。

ジャック・ライアン・シニアは、民主党政権の政策に耐え切れず、再び大統領を目指して選挙戦に乗り出しました。世論調査では圧倒的に有利なのですが、ライアンを怖れるテロ集団は、ライアンに攻撃を仕掛けます。それはライアンの非合法活動への疑いを非難するという形で現れ、盟友クラークに逮捕状が出されてしまいます。そもそも、「ザ・キャンパス」が憲法違反的存在なのですが・・。

一方、パキスタンでクーデターのリスクが高まります。長年テロリスト集団を操っていた将軍が、表舞台に姿を現そうとしているのです。宿敵インドとの間に緊張を作り出して警戒レベルを上げさせ、装填のために持ち出される核爆弾を盗み出し、脆弱な文民政府を打倒するとのシナリオが、実現に向けて動き出します。

民主国家であるにもかかわらず、テロ支援国家として名指しされることもあるパキスタンの政情とは、本書に描かれた通りなのかもしれません。軍内部においても2派が拮抗しているという仮説は、現実に起きていることを理解しやすくします。

ラストは、ハリウッド映画のような危機一髪でしたが、もともと映画と相性のいいシリーズなのでやむをえないところでしょうか。ジャック・ライアン・ジュニアの恋人が絡む陰謀は、次作に続くのでしょう。

2014/2