りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ウォータースライドをのぼれ(ドン・ウィンズロウ)

イメージ 1

ストリート・キッズあがりの心優しい青年探偵「ニール・ケアリー」シリーズの4作目。これまで事件があるたびに関係者の女性に惚れてしまい、イギリスや中国でフラフラしていたニールですが、前作高く孤独な道を行けで出会ったカレンとは「運命の出会い」だったようで、その後ずっと朋友会は休業状態のまま、ネヴァダの片田舎で一緒に暮らしていたのですが、例によって養父グレアムから「じつに簡単な仕事でな、坊主」と、新しい指令が届きます。

今回の指令は、全国ネットTV局の創設者ジャックにレイプされたと訴えを起こした女性ポリーを裁判できちんと証言できるよう磨き上げることでした。というと、前のアメリカ大統領が起こしたスキャンダルを連想する方も多いでしょうが、本書の出版は1994年。モニカなる女性はまだホワイトハウス入りしていません。

さて、例によって事件は単純なものではありませんでした。ジャックの背後にはニューオリンズの大物マフィアが控えており、訴えを利用して会社の支配権を得ようとする大株主は、NYのマフィアと結びついていたのですから。

別口の探偵や、殺し屋まで登場して二転三転する中で、関係者の手打ちが行なわれて一件落着・・となるはずでしたが、それではおさまらない者がいたんですね。被害者のポリーと、ポリーを探し当て掴みあいのケンカをしたもののいつの間にか彼女と親しくなっていたジャックの妻キャンディと、両者の世話をしていたカレン。ニールは女性たちの味方をして、孤立無援の戦いに向かうのですが・・。

著者はこの本を「マイ・フェア・レディ」のアメリカ版としたかったようですが、結果としては国際ニュースよりもスキャンダルの報道に加熱するようになってしまった、アメリカという国を描き出すことによって、後のクリントン事件を予言するような内容となっています。

さて、本書のラストでニールとカレンはついに結婚。このシリーズはあと1作で終了となるのですが、ニールはすでに「キッズ」を卒業したのですから、それも仕方ありませんね。

2010/5読了