りぼんの読書ノート

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失踪(ドン・ウィンズロウ)

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ストリート・キッズでデビューし、メキシコからアメリカへの麻薬密輸問題に踏み込んだ犬の力で大ブレークを果たした著者による警察サスペンスです。もっとも主人公は、すぐに警察を退職してしまうのですが。

アメリカ中西部の平穏な町で5歳の少女ヘイリーが失踪し、未解決のまま3週間が経過。そして第2の事件が発生。少女の生存への期待が薄らぎ捜査陣も縮小される中で、責任を感じた刑事デッカーは、警察を退職して少女の捜査に専念。わずかな手がかりを求めてたどりついた先は、大都会ニューヨークでした。

そこでデッカーが出会ったのは、ヘイリーがそのまま成人したかのような人気モデル、彼女を売出して愛人にしている有名写真家、娼館の経営者、マフィアのボス。さまざまな人間模様が交錯する街で、デッカーはヘイリーにたどり着くことができるのでしょうか。そして彼女は無事なのでしょうか。

現実の悲惨な事件に義憤を感じて、作品に反映させることも多い作家です。現実のおぞましい性犯罪や人身売買事件はもちろんのこと、誘拐事件の被害者生存率が時間の経過とともに低下していきやがては諦められること、白人と黒人の混血である被害者が軽く扱われているのではないかという疑念、被害者の母親が真っ先に疑われることなどに対する、やり場のない怒りが、本書の原動力になっているのでしょう。

2015年12月に出版された本書は、前年にドイツで出されたもののアメリカでは未刊の作品だそうです。政策に批判的な要素を含むことが多い著者の作品だからなのかもしれません。

2017/10