りぼんの読書ノート

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オケ老人!(荒木源)

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人気アマオケ「梅ヶ丘フィルハーモニー」の演奏に感動して、再びバイオリンへの挑戦を決意した高校教師の中島でしたが、間違って「梅が岡交響楽団」に入団してしまいます。そこは、平均年齢が70歳を超えると思われる、演奏も覚束ない「オケ老人」たちの集団でした。レパートリーに「荒城の月」や「花嫁人形」が並ぶあたりは、脱力もの。

若者の入団を喜ぶ老人たちを前に勘違いだと言い出せなくなった中島は、心臓の調子を悪化させた野々村老人に代わって、オーケストラの指揮者を務めるハメになってしまいます。演奏以前に、健康、痴呆、生活、家族関係などの問題を抱えた団員たちを相手に四苦八苦する中島だったのですが・・。

地元の名士で完璧主義のコンマスに率いられた「梅フィル」との確執や、両楽団の指導者の息子と娘の「ロミジュリ」のような恋愛や、ロシアの人気指揮者ゴルゴンスキーの来日騒動や、なぜか登場するロシアスパイの滑稽な暗躍など次々と起こる事件の中で、「音楽の楽しさ」が伝わってくるのは、なかなかのもの。

やはり音楽をテーマにした船に乗れの著者である藤谷治さんの解説がついています。音楽を巡る幸福と不幸という正反対のテーマを描きながらも、音楽を文章で表わす苦労は同じですね。どちらの作品も成功していると思います。

2017/10